2月12日に『新版 人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。』を発売した千田琢哉さん。大学時代に1万冊以上の本を読み、今では170冊以上の著書を持つ、“本の虫”です。

そんな読書を愛する千田さんに「人生を変える1冊との出会い方」や普段あまり本を読まない人の本の選び方など「読書術」についてお聞きしました。

(聞き手:日本実業出版社・PR担当S)

「人生を変える1冊」との出会い

――大学4年間で1万冊以上の本を読破した千田さん。きっかけは、中谷彰宏さん著『昨日までの自分に別れを告げる』(PHP研究所)に感銘を受けたからだとお聞きしました。この1冊が当時のご自身に響いた理由を教えてください。

千田さん:当時、仙台の一番町商店街にあった丸善に漫画雑誌を買いに行ったら発売日を一日早く間違えてしまって…それで近くに並んでいた妙に気になる本に手を伸ばしたんです。それが『昨日までの自分に別れを告げる』でした。

別に大学生活に不満があったわけではありませんが、「自分にはもう一つ何かが足りない」という思いがどこかにあった気はします。カバーそでに「人間は2通りしかいない。宝の地図を手に入れた時、本物かどうか確認してからでないと、動けない人。そして、宝を探しに行って確かめる人。」と書いてあったんですよ。

それまで漫画しか読んだことのなかった自分にはそれが心に響きました。まるでどこかの冒険漫画に出てきそうなセリフだったからかもしれませんが、「漫画以外の本でもこんなにわかりやすいのがあったの?」って感動しましたね。

「普段あまり本を読まない人」の本の選び方

――そこから本の魅力に気づいたのですね。新刊内のおすすめ本を紹介するコーナーには、イソップ寓話からビジネス・自己啓発があり、かなり広いラインナップだと感じました。普段あまり本を読まない人は、まずどういった本から読み始めるのがベストでしょうか?

千田さん:僕の場合と一緒で、最初は無理に背伸びする必要はないと思います。自分が本心から響く本から読むといいですよ。でないと昔の僕みたいに本嫌いになりますから。

できれば、お気に入りの著者の本を全部読んでしまうのが理想です。僕の場合は、90年代当時の中谷さんはまだ100冊も本を出していませんでしたのですぐに全部制覇して、書店で中谷さんの本の隣近所に並んでいた本に触手を伸ばしましたね。そこで見つけた鷲田小彌太さんという哲学者の本がきっかけで哲学の本も渉猟するようになりました。

鷲田先生はスピノザを専門にしておられて、まずはスピノザから読み始め、そこから派生してライプニッツ、デカルト、ヒューム、カント、ヘーゲル…と貪り読みました。

本を買う基準は「専門性」「カバー」「タイトル」

――芋づる式に本を選んでいくのですね。そうなると際限なく本が欲しくなってしまいそうですが、千田さんが本を買うときの「購入する・しない」の基準は何ですか?

千田さん:専門書を選ぶ際には、必ず著者の経歴を丹念にチェックします。その著者本人が執筆したのか監修なのかも必ず確認しますね。それは僕が専門書には高い精確さを求めるからです。これは大学時代から変わっていません。

大学が研究者養成機関だったので指導教官すべてが書籍の選び方には滅法厳しかったんですよ。きっとそれが影響していると思います。専門書以外の購入基準はとても緩くて、カバーとタイトルがビビッときたら即買いです。

お気に入りの書店は、愛を感じる「ジュンク堂」

――大学時代は、「出身校」ともいえるくらい仙台の丸善と金港堂に通い詰めたと聞きました。その後上京した千田さんですが、東京でもお気に入りの書店はできましたか?

千田さん:それは秘密です(笑)これまでお気に入りの書店を公開するたびに100%の確率で読者やファンの方から現場で声をかけられてしまい、誠にありがたい話なのですが、肝心の書店のあの空間を一人静かに堪能することに集中できませんでした。

こっそり囁いておくと、会社勤めの頃によく入り浸っていたジュンク堂書店の大阪本店は好きです。あそこを自宅にしたいくらいにね。ジュンク堂書店は全般に好きです。著者とお客様に愛を感じますから。

ジュンク堂書店大阪本店のTwitter

ネット書店は「教養の穴埋め」として併用する

――「本を書店で買う」って読書の醍醐味ですよね! ただ、最近ではコロナ禍の時勢もありネットでの買い物も多くなりました。千田さんもネットで本を購入したり、情報収集にSNSを利用することはありますか?

千田さん:SNSで本の情報収集をしたことはありません。Twitterはニュース速報代わりによく検索をかけて活用していますが、本を購入するきっかけや決定打になったことは一度もありませんね。

ネット書店は「お前は俺か?」というほどマーケティングが上手いのでよく乗せられて購入しますが、教養の穴を埋められて便利だと思います。

リアル書店は奇跡の出逢い、運命の出逢いを求めます。ペットショップのように生で実物を見て、本に僕が選ばれます。

最近読んだとっておきの1冊を特別にご紹介

――新刊『新版 人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。』では「生き抜く力を磨くための21冊」を紹介いただきました。この記事の読者に向けて、千田さんが最近面白いと思った22冊目を特別に教えてください。

千田さん:小林秀雄さんの『直観を磨くもの』です。

これは対話集なのですが、湯川秀樹博士とのページのボリュームが異様に厚い。その中で小林さんが大作家について述べられているシーンがあります。

ぜひ実際に本を手にしてもらいたいのですが、本物の作家というのは作品そのものが面白いというのです。それに対して凡庸な作家は作品よりもその人間のほうが面白い。本質や核心で勝負できないから他でお茶を濁すということでしょう。深いです。

――本物の作家と凡庸な作家の違い…。その違いがわかるようになるまで道のりは遠そうですが、教えてくださった本は大切に読みたいと思います。今回は貴重なお話をありがとうございました!


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千田琢哉(せんだ たくや)

愛知県生まれ。文筆家。
東北大学教育学部教育学科卒。日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって得た事実とそこで培った知恵を活かし、“タブーへの挑戦で、次代を創る”を自らのミッションとして執筆活動を行っている。著書累計は340万部を超える(2021年2月現在)。
ホームページ:http://www.senda-takuya.com/