年の瀬や新年のパーティーをはじめとする大人数が集まる場で困るのが「なにかひと言」とコメントを求められること。せっかくの機会ですから「残念なひと言」ではなく「見事なひと言」を言いたいものですが、どうすればいいのか。元テレ朝アナウンサー・渡辺由佳さんの著書から見てみましょう(参考文献:『どんなに緊張してもうまく話せる!』)

パーティや懇親会、飲み会の席で突然指名されて、うまく話すことができず、あとから「ああ言えばよかった」と後悔したことがある人もいるかと思います。突然の指名にもかかわらず、うまく話をまとめることができる人はなにが違うのでしょうか。じつは、突然の指名に向けて、しっかり準備しているのです。

突然の指名に備えてその場の様子を観察する

一番大切なのは、「突然の指名」を予感して準備をすることです。私も「元アナウンサー」という肩書を背負って仕事をする以上、会議やパーティでひと言も発言せずに帰らせてもらえることはほぼありません。ですから、「いま、ここで指名をされたら、なんの話をするか」をつねに頭のなかでぐるぐる考え続けています。

スピーチの内容を考えるときに大切なのは、まずパーティや飲み会の様子をよく観察することです。それまでにだれがどんな発言をして、まわりがどのような反応をしたのか。そこにヒントがあります。

ある研修会社の創立記念パーティでのことです。突然、ひと言と指名されました。

「突然のご指名をいただきました、フリーアナウンサーの渡辺由佳です。さきほど、BさんがAさん(パーティの主催者)のおかげで今日がありますとおっしゃっていましたが、私が今日、企業の研修講師として仕事ができていますのも、Aさんのおかげです。

私が子育てに追われてほとんど仕事をしていないときに、『渡辺さんのようなキャリアを持つ人がなぜ社会貢献をしないのですか!』とAさんに喝を入れていただいたおかげで、『仕事をしなくては!』と目覚めることができたんです。Aさん、いつも感謝しています!」

私の前にスピーチしていたBさんの内容を受け、さらに「私だけにしか披露できないエピソード」をくわえました。そして、もちろんそのエピソードのなかでパーティの主催者を立てます。それによって、その場にふさわしいひと言になります。

短くてキレのあるスピーチが歓迎される

会社の懇親会や飲み会などでも同じです。「部長、なにかひと言をお願いします」などと指名された人が、「えー、突然だから、なにも考えていないよー」などと言っていては、スマートではありません。なにも考えていなかったからといって、本当に思いつくままにダラダラ話していては、部下たちはがっかりしてしまいます。

そんなとき、気の利いたひと言を言うためには、どうすればいいのでしょうか。

予定にはなかった、「ちょっとひと言」ですから、あまり長々と話しても間延びしてしまいます。その会の時間もかぎられていますので、なるべく短くスマートにまとめたいものです。たとえば、飲み会の席のお開き近くで突然指名をされた上司であれば、つぎのような長さで十分です。

「では、本当にひと言だけ。オフィスを離れてみんなと話をするのは、楽しいですね。さっき、Cくんから○○の話を聞いて、みんなのがんばりがこの部署と会社を支えているんだとあらためて実感しました。また明日から、がんばりましょう! そして今日の会の幹事をしてくれたDくんに大きな拍手を」

このように、突然の指名でのひと言は、短ければ短いほどキレが増すものです。30秒以内、長くても1分以内にまとめて話せば、スマートな印象を与えます。さらに幹事へのねぎらいの言葉を添えれば、周囲は「さすが」と思うでしょう。

こうした話ができるのは、「もし、指名されたら何を話そうか」と常に考えて準備しているからです。そうすれば、いきなり指名されても言葉につまることはありません。あたふたすることなく、余裕を持って話すことができるでしょう。