節約と貯金が大好きで、「30歳で1000万円貯めました」といったって、それでどうするんですかと聞くと、「いやもしもの時のために」と。もちろん、もしもの時の保険という機能はあります。でも、「もしも」とはどんな時のことか、その時にいくら必要か、まったく計算していない人がほとんどです。1000万円じゃ到底足りないかもしれないし、多すぎるかもしれないのに。

お金は、幸せのなるための道具にすぎません。ただ貯めるだけではなくて、今よりもハッピーな人生を送るために自己投資するとか、上手に使ったほうが、より満足度の高い生き方になると思っています。

──いい人は貯金はするけど投資はしない、と。

『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』著者・午堂登紀雄氏
『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』著者・午堂登紀雄氏

いい人は、「失敗してはいけない」という固定観念が強いんです。つまり挑戦をしない。お金に関してもそうで、1円でも損するのがいやなんですね。1回でも負けたくない。これもまたおかしな話です。

たとえば、スポーツをする人は、うまくなるために練習します。シュートを外しても外しても、練習すればそれだけうまくなるじゃないですか。仕事もそうです。若い頃に多くの失敗を経験しながら、成果を出せるようになっていく。上達のためには練習が必要です。

でも、なぜか投資に関しては、練習もしないのに全戦全勝したい。ものすごく虫のいい話ですよね。それで、1回でも負けるとあきらめてしまう。

にもかかわらず、買ったとたんに価値が1割下がる新築マンションを3000万円で買って、300万円損しているのにまったく意に介さない。こういう人に限って、儲け話にウラも取らずに一口のって、失敗したりします。失敗しても、それを教訓にして次に活かせばいいんですが、そうせずに誰かのせいにする。

いい人には「自己責任」という概念が欠けているんですね。誰かが何とかしてくれるという発想がある。でも、結局は誰も何もしてくれないから、国に文句を言ったり、会社のせいにしたりする。依存体質の傾向が強いように感じます。

また、いい人は、他人の言うことをむやみに信用し過ぎることがあります。銀行に対して全幅の信頼を持ち、窓口で手数料が高い投資信託を買ったり、企業の広告宣伝を鵜呑みにして効果が怪しい健康食品を買ったりする。人の話や常識を、「本当か?」「なぜそうなのか」と疑い、本質を問うような思考をしないのです。

「貯めよう」から「稼ごう」へシフトしよう

──では逆に、「お金が寄ってくる人」はどんな特徴を持っていますか?

お金が寄ってくる人は、「貯めよう」とせずに「稼ごう」とします。お金は、稼げば稼ぐほど使いきれなくなって自動的に貯まるものです。そのためには「先行投資」という考え方を持つことです。

「稼ぐ」という行為は、誰かの「困っている」や「こうしたい」を探し、自分の持っている能力を人や社会へ提供し、相手に貢献することで感謝という対価をいただくことです。自分だけではなく相手もハッピーになる、発展的な行動なんです。一方で、「貯める」は自分だけの満足で終わってしまう行為。内にこもる行為であって、誰の役にも立ちません。

「稼ごう」へ発想をシフトして、稼ぐ力をつけるために、スクールやセミナー行くとか本で勉強するなど、自分に「先行投資」をする。「まず貯めよう」という発想では、「先行投資する」という考えすら浮かばないでしょう。

先行投資のためには「お金を借りる」という方法もあります。たとえばMBAを取るために留学したいとします。その費用が貯まるまで3年も5年も待っていては、得られるはずのチャンスを逃してしまう。借金してでもすぐ留学すれば、取得後に就いた仕事で、年収や経験というリターンを回収できると考えることもできます。

「先行投資」でチャンスを買って、それを活かしてお金を「稼いで」、幸せという「リターン」を手に入れる。この一連の流れを体験すれば、人生の選択肢が広がります。

──では金融商品などに投資する場合はどのように考えたらいいでしょう?

投資で大切なのは根拠・判断軸・再現性です。その商品になぜ投資をするのか、どんなリターンを得るのか、という根拠や方向性をしっかりもって、成功しても失敗しても理由を考えて教訓とし、次につなげることを意識すると良いと思います。

その意味で、投資信託は個人的にはあまりおすすめしていません。他人が運用するものだし、「なんなく上がりそうだしいいかな」という曖昧なイメージで買ってしまいがちだからです。根拠がないから判断軸が養われない。判断軸がないから再現がない。つまりは、多少儲かったところで、次に活かせないんです。