著者が先月購入したパナソニックの商品には以下の様々な、負のイメージに対する「イメチェン」が満ちていたそうです。

・パッケージに表示するネーミングは「エチケットカッター」とし、「鼻毛カッター」というダイレクトなネーミングは使わない。

・一見、携帯音楽プレイヤーなどの電子機器を思わせるようなデザインや、明るい色のバリエーションを用意

・鼻だけではなく、「マユ」「ヒゲ」「耳」といった部分にも使えることをアピールし、「鼻毛処理用としてではなく、ヒゲの手入れのために購入する」という「逃げ」を与える

「恥ずかしいもの」から「エチケット用品」としてイメージチェンジし、手にとってもらうための様々な工夫がなされています。
「“とても”恥ずかしい」商品のイメージを変えることは容易ではありませんが、鼻毛カッターのように「ちょっと恥ずかしい」くらいの商品に工夫を施すことによって、新たな多くの消費者を得ることができるようになるのです。

Case3. サントリー『レモンジーナ』は品薄商法?

テレビ番組で紹介されていたチョコレート。ネットの記事で健康にいいと書かれていた乳製品。販売がメーカーの想定を大きく上回り、生産が追い付かず一時出荷停止となることがあります。最近の例では、サントリーの『レモンジーナ』が記憶に新しいところです。

品薄になると簡単には手に入らないため、「買いたい」と考える消費者が多く生まれます。さらに、一時生産中止がニュースとして取り上げられると商品の知名度が上がるとともに「そんなに売れたなんて、いい商品に違いない」というイメージの向上にもつながり、売り上げアップに貢献することもあるでしょう。

たくさんの商品があるなか、品切れ商品は気になるもの!?(photo by tom200/photoAC)

しかし大ヒットがもたらす意外な落とし穴が……
品薄商法のデメリットとは?


前述の「レモンジーナ」には「わざと少なめに生産し、市場での枯渇感をあおる品薄商法ではないか」との批判が集中した時期があったそうです。真相は不明ですが、著者は品薄商法を展開することのメリットとデメリットを比較すれば、断然デメリットの方が大きいため、その可能性は低いのではないかと考えています。

というのも以前、テレビによる「寒天ブーム」のあった後、著者がある大手寒天メーカーに「儲かったでしょう」と聞いたところ、「あれは迷惑以外の何物でもなかった」という意外な返答があり、品切れのデメリットの大きさを知ったからだそうです。

その理由は、おおむね以下のとおりです。

・欠品が相次ぐ卸売業者や小売業者からの度重なる督促への対応

・寒天の原料となるテングサも品薄となり、仕入れ値が高騰

・通常の生産体制では対応できないため、従業員の残業代など生産コストの上昇

・コスト増を商品価格に転嫁できないことによる収益悪化

(『すごい差別化戦略』126ページより)

一度欠品となると、小売業者はその商品を多めに仕入れようとし、卸売業者もさらに余裕を持った量を確保しようとするため、実際の需要を大きく上回る発注数につながります。それが原因となって生産現場が混乱し、さらには最悪の場合、ブームが去った後の大量の在庫処分につながってしまう可能性があります。

品薄商法をうまく活用して、競合他社との「差別化」を際立たせる手法もあるのかもしれません。しかし品切れによって消費者に失望感を抱かせ、生産にも混乱をきたす可能性を考えると、慎重に行なうべき差別化強化策といえます。


以上3つの、「差別化」の例をご紹介しました。競合他社との「違い」をつくるためには、徹底的なこだわりやとイメージ戦略など、様々な方法があることがわかります。変化が激しく、激しい競争が展開されるいまの市場で、他との「差別化」をどう図っていくのか。他社の成功事例から得るものも多いのではないでしょうか。