『10000円のカレーライス NPOで見つけた心にのこる物語』は、様々な場所で活動しているNPOの現場で実際にあった出来事を21編収録した書籍です。

「NPO」ってよく聞くけれど、なにか良いことをしている人たち? ボランティア? 実際どういうことをしているかわからない……という人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、実際にNPOで活動する人たちと一緒に本書を作った担当編集者に、制作過程での秘話を聞いてみました。

また、そのインタビューに続き、表題作「STORY2 10000円のカレーライス」を特別に転載します。許可をいただいた“いしのまきカフェ「 」(かぎかっこ)”のみなさん、ありがとうございました。(文責:日本実業出版社)

 編集者が感じた。やさしさとつよさ

――そもそもNPOってどういうものですか?

社会には、いろいろな課題があります。でも、そうした課題のすべてを行政や企業が解決できるわけではありません。取り残されたようになっている社会的な課題の解決に向けて非営利で活動をしているのがNPOです。

――NPOにはどんな人たちが集まっているんですか?

もちろん、社会的な問題の解決に関心のある人たちが集まっているのですが、実際にお会いし話を聞いていると「社会貢献」という肩ひじ張ったイメージ以上に、「やさしく、つよい」人たちの集まりなんだなと感じました。

ある方の言葉が印象に残っています。「社会貢献という言葉はメディアが作ったものだと思いますね。そんな大げさなものじゃないんです。困っている人が困っているままになっているのは、おかしい。ほうっておけないけど、誰もやらない。誰もやらないから僕がやっている。それだけのことなんですけどね」とおっしゃっていました。
つよい信念があるから人に、自然にやさしくなれる。私が取材でお会いしたのは、そんな人ばかりだったように思います。

――「やさしく、つよく」生きる人たちのエピソードを集めたのが本書なんですね。

そのとおりです。NPOでは、人生を変える出会いと人のまごころに触れる出来事が、毎日のように生まれています。それらの物語は、NPOのみなさんのなかで、静かに大切に語り継がれているんですね。こうした物語は、編者である日本財団CANPANプロジェクトの方の言葉を借りると「社会の宝」なんです。そのなかでもとくに選りすぐりの「社会の宝」を収録したのが、本書ということになります。

――本書では21編のエピソードが収録されていますが、ズバリおすすめは?

もちろん21編すべてがおすすめです。この本の製作過程で何度も読んでいても、思わず微笑むエピソードや、涙腺が緩んでしまうエピソードがあるので、それを紹介しますね。

まずは、タイトルにもなっているSTORY2「10000円のカレーライス」。東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市に、「いしのまきカフェ「 」(かぎかっこ)」というカフェがあります。いしのまきカフェ「 」は、NPO法人が、高校生が「自分と地域の将来」を学ぶためにプロジェクトを企画し、地元高校生によって運営されている飲食店です。そのカフェでのお客様との心の交流のエピソードです。

現地へ取材に行って、高校生スタッフ二人から話を聞きました。石巻への思いを聞いていると、「よくテレビで被災地って言ってるけど、『被災地』って言われたくない。震災前に元通りにすることが『復興』ではないと思う」という言葉を聞かされました。
私が想像もつかないような経験や想いをしただろう彼の言葉は、いまも私の心にのこっています。あれ以来、「被災地」「復興」という言葉は気軽に使えなくなりました。
石巻の高校生たちが、どんな想いをもって、カフェを運営しているのか……。

ぜひ想いの一部を知っていただきたいので、今回、特別にこの「10000円のカレーライス」のエピソードをそのまま転載する許可をいただきました。(※本記事、最後に掲載)
このエピソードを入り口に、他のエピソードも本書を手にとって読んでいただけると嬉しいです!