朝礼の代わりに「社長ラジオ」を配信

経営者やリーダーの最も大切な仕事とは、チームが目指す方向性やビジョン・価値観などを社員に提示し、それを浸透させていくことです。メンバーが方向性やビジョンを認識し共有できれば、現場レベルで臨機応変に問題に対処でき、効率的に仕事が進みます。

従来のオフィスワークなら、社員は原則としてオフィスに集まりますから、経営者やリーダーは朝礼や会議、打合せなどの機会に、直接ビジョンや価値観を社員に伝えられますが、リモートワークではそうした機会がありません。

そこでソニックガーデンが取り組んでいるのが、倉貫社長自身が毎朝5分間の音声メッセージを録音してメンバーに配信する「社長ラジオ」です。各自のスマートフォンに配信されるその音声メッセージは、自分の都合のいいタイミング・好きな場所で聴くことができる朝礼のような役割をはたしています。

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経営者が、毎日、少しずつでも経営の情報や自身の考えをこまめに伝えていくことで、会社の施策への納得感や強い共感につなげることができます。また「社長ラジオ」を毎日聴くことで、社員から社長に対する親近感を自然と持ってもらえます。社長が「遠い人」ではなく、身近な存在になるのです。

 

──これまでにない新しい働き方である、「リモートチーム」。

一般の会社がこのワークスタイルを今すぐ導入することは難しいかもしれません。
しかし、この「リモートチーム」は「会社に所属して働く」ことの意味を変えるものであると同時に、仕事におけるチームワークやコミュニケーションの本質を再認識させてくれる、画期的なワークスタイルと言えるのではないでしょうか。

最後に、なぜリモートチームを広めたいのか? という問いに対する、倉貫氏の言葉を紹介します。

リモートチームが広まることで、前向きに楽しく働ける人が増えるのではないか、と考えています。場所に縛られているせいで、本当に働きたい人が働きたい会社で働けずに不幸になっているのだとしたら、社会全体にとっての損失です。リモートワークが定着すれば、会社側も、優秀な人材がいても通勤が足かせになって採用できないということもなくなり、地方に戻るからといって会社を辞めてもらう必要もなくなるのです。

 

人が楽しく働くために必要なのは、高い報酬が得られることよりも、好きな仕事をすることや、信頼し合える仲間がいて良好な人間関係が築けていることです。もちろん報酬もモチベーションの一つかもしれませんが、それによって働くこと自体が楽しくなるものではありません。リモートチームなら、好きな仕事、好きな仲間を選ぶ時の制約をなくしてくれます。(おわりにより)