結論から言うと「そんなものはありません」。期待して「次のページ」をクリックした方には騙したようで申し訳ないのですが、そもそも自己PRとはウケるために話す(or書く)ものではないのです。就職コンサルタントとして全国の大学で講演をしている坂本直文氏は以下のように語っています。

企業の仕事には、事務、経理、営業、販売、企画など、様々なものがあります。そして、それぞれの業務によって、必要な資質は違ってきます。

したがって、自己PRの範囲は、あなたが思っている以上に広いのです。志望企業の仕事に役立つのであれば、能力・資質・知識・経験・習慣・心がけ・趣味・特技・資格・習い事など、すべてがPRになります。

そして小さなことでも複数組み合わせて伝えていけば、必ず高評価が得られます。何も、人が驚くようなスゴいことである必要は一切ありません。むしろ、「リーダーです」、「全国大会で1位です」とだけ言われても、それだけしかPRされていないのであれば、採用担当者は興味を示さないのです。

(『何をPRしたらいいかわからない人の 受かる! 自己PR作成術』 P.11より)

「すごいPR」ではなく、「すごそうに見えるPR」が内定につながる

ここまで読んで「そうは言っても、“すごくて、派手で、どう見てもこの人の能力は群をぬいてる!”ってPRができる学生しか、企業は相手にしてくれないじゃん!」と思う学生の方もいることでしょう。でも、それも少し違います。

内定を取れる人は、全員が全員「全国大会優勝!」みたいな実績がきちんとあるわけではありません。派手な実績がなくても内定を取れる人は「すごそうに見える」「企業で活躍してくれそうに思わせる」PRをしています。要するに表現の問題なのです。内定者の実例を挙げてみてみましょう。

ケース1:飲食店のバイトでリーダーをしていたわけでもなく、雑用に従事していた

正直に「飲食店でアルバイトをしていましたが、とくにリーダー的な役割をしていたわけでもなく、ただ雑用を黙々と続けていただけでした」と話したとしたら、好印象にはつながらないでしょう。しかし、このように書き換えてみたらどうでしょうか?

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『何をPRしたらいいかわからない人の 受かる! 自己PR作成術』 P.39より

書いてある内容としては、掃除やゴミ捨てなど飲食店の大事な仕事であるものの、後輩への指導とか店舗経営に関わる判断に携わるといった、リーダーシップを感じさせるようなものではありません。

しかし、下線部1・3のように「人があまり進んでやりたがらない“3K仕事”を積極的に行なってきた」という姿勢を前面にだすことは、「この学生は、たとえ目立たない、地味な仕事であっても“やるべきこと”として最後まで業務を遂行できる」と、企業側にとっては非常に好印象を与えます。また、PRのポイントをわかりやすい見出しにしたことも評価できます(下線部2)。

ケース2:文化系サークルで、不手際を起こしたことがある

また、失敗談から学びえたことを自己PRのネタにする方法もあります。実例を見てみましょう。コンテストで優勝したわけでも、何百~何千人規模のビッグイベントを成功に導いたわけでもないどころか、せっかくのイベントで失敗した経験をもとにした自己PRです。

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『何をPRしたらいいかわからない人の 受かる! 自己PR作成術』 P.77より