一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第88回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「客観的な視点」について。
文章力の伸びは「自分では判断できない」
「最近、文章が少し上達したかも?」——そんな感覚を持ったとしても、それが本当かどうかを自分で判断するのは難しいものです。なぜなら、文章は〈自分が書いたもの〉であると同時に、〈誰かに読まれるもの〉でもあるからです。
書き手が「うまく書けた」と感じても、それだけで「文章力が伸びた」と判断するのは早計です。読み手がどう感じたか、どう受け取ったか、どれだけ伝わったか——これこそが重視すべき基準です。つまり、文章力の伸びを把握するには“他者視点”が必要なのです。
“伝わる文章”への進化を実感する瞬間
では、そんな“他者視点”の観点から、文章力が着実に伸びている人に共通する「3つのサイン」をご紹介します。
(1)SNSなどで“反応”が増えてきた
今は誰でも、SNS・ブログ・noteなどを使って文章を発信できる時代。最初は反応が薄くても、投稿を重ねていくうちに“いいね”やシェア、コメントが増えてきたなら、それは文章の伝わり方が変わってきた証拠です。
テーマの選び方、構成、言葉の選び方が読み手に届くレベルに達してきた可能性があります。これは立派な成長のサイン。自信をもって、次のステップへと進みましょう。
(2)「上手な人」に添削を受けて、修正点が減ってきた
文章力を高めるうえで“他者視点”は欠かせません。とくに、経験豊富な人に「赤ペン」を入れてもらうのは、上達への最短ルートです。
はじめは多くの修正点があったとしても、何度も添削を受けるうちに指摘が減ってくる——これは、自分の文章に筋が通り、読みやすくなってきた証拠と言えます。「どこをどう直せばよくなるのか」が見えるようになると、文章改善のスピードも格段に上がります。
(3)「読み手視点」でチェックできるようになった
文章を読み返すとき、ただ誤字脱字を探すだけでは不十分です。大切なのは、読み手の立場で読む力を養うこと。たとえば、「一晩寝かせて読み返す」「他人に読んでもらう」などに加え、昨今では生成AIを使って客観的に構成や表現を見直す人も増えています。
これらの方法を通じて、自分の文章を客観的に見直すクセがついてきたなら、それもまた成長の証です。自己満足に浸らず、「伝わるかどうか」に意識が向いているからこそできる習慣です。
文章力は“反応”で伸ばす
文章には、テストの点数のような“スコア”や“評価”が存在するわけではありません。だからこそ、「上達している」という手応えを感じにくいのです。
「うまく書けた」と思っても、それが自己満足かどうか判断しづらい——多くの人がそんなモヤモヤを抱えています。それゆえ、“他者視点”を借りながら文章をチェックする機会を設けることが大事なのです。
【“他者視点”で自分の文章力を測る】
- 世の中に文章を出す(SNS・ブログ・メルマガなど)
- 他者の反応を見る(いいね数、コメント数・シェア数など)
- 文章が上手な人に見てもらう(添削・レビュー)
- 修正して再び世の中に出す
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この4つは、自身の文書力の高低を測るうえで有効なPDCAサイクルのようなもの。このサイクルを愚直に回すことで、あなたの文章力は着実に伸びていくでしょう。
山口 拓朗(やまぐち たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術』(SBクリエイティブ)、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。