一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第84回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「潜在ニーズへの働きかけ」について。
読者が商品を買わない意外な理由とは?
営業やセールスの文章を書いても、読者(=商品ターゲット)が商品やサービスを購入しない理由のひとつに、「ターゲット自身が抱えている問題やニーズに気づいていない」というケースがあります。自覚していないわけですから、商品やサービスへの反応が薄いのは当然です。
この問題を解決するためのアプローチのひとつが、文面内で「気づかせる(=自覚させる)」という手法です。
たとえば、「最近、長引く咳に悩まされていませんか?」と問いかけることで、「そういえば、咳が1か月近く続いているかも……」と自分が抱えている健康の問題に気づきやすくなります。
「そういえば……」という反応は、彼らが〈深刻には考えていなかったけど、もしかすると問題があるのかもしれない〉と気づく瞬間です。この気づきを引き出すことができれば、その後に紹介する商品(例:咳に効果的なハーブティー)への反応が良くなり、購入につながりやすくなるのです。
潜在的な問題やニーズに気づかせ、購買意欲を刺激
「長い間使っていない不用品、家に眠っていませんか?」と問いかけることによって、「そういえば、何年も前から使っていないトレーニング機器があるな。あ、壊れた古い暖房器具も放置したままだ」と思い出すきっかけになります。気づかせた直後に「不用品を無料で回収します」と提案をすると、「じゃあ、お願いしてみようかな」と行動に移りやすくなるのです。
同様に、「快適な睡眠を取れていますか?」「夜中に何度も目が覚めてしまうことはありませんか?」と呼びかけることによって、「そういえば、最近よく眠れていないかもしれない」と、睡眠の質に問題があることに気づきやすくなります。続いて、睡眠を改善するための枕や、快眠を助けるアプリなどを提案すれば、その必要性を強く感じるはずです。
「休日にも疲れが抜けないあなたへ。原因はもしかしたらビタミンB1の不足にあるかもしれません」のように、ストレートに問題を言い当てる手法も有効です。その後、ビタミンB1の不足が招く問題を説明し、その問題を解決する商品を紹介することで、「その商品が欲しい!」という気持ちが芽生えやすくなります。
このように、営業やセールスの文章では、商品ターゲット自身が抱えている問題や潜在的なニーズに働きかけるアプローチが有効です。商品ターゲットが自身の問題を自覚していない場合、どれだけ優れた商品やサービスを紹介しても、その価値を感じてもらえません。 “問題やニーズに気づかせる”アプローチで自覚を促しましょう。
山口 拓朗(やまぐち たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。