人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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江戸の生活を支えた伊奈家

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2018/12/25 09:51

利根川・利根大堰(photo by 三浦晃/fotolia)

2019年正月、NHKが正月時代劇として「家康、江戸を建てる」を2回にわたって放送する。門井慶喜の同名の小説をドラマ化したものだが、放送されるのは、オムニバス形式の小説のうち「水を制す」と「金貨の町」の2編。このうち「水を制す」に登場するのが伊奈家である。

伊奈家は清和源氏の出で、ルーツは信濃国伊那郡。のちに伊那を去って三河に転じ、「伊奈」と改称して松平家に仕えたのが祖という。嫡流は福島正則と争って切腹して断絶。再興した分家は江戸初期に武蔵小室藩1万石を立藩したものの、3代目忠勝が9歳で死去して再び断絶している。

関東郡代となって伊奈家を興したのは忠勝の叔父忠治で、伊奈家嫡流からみると分家の分家にあたる。忠治は寛永19年(1642)に関東諸代官の統括を命じられて利根川東遷事業に成功、以後代々関東郡代を世襲して旗本ながら大きな力を持った。

茨城県には、平成18年まで伊奈忠治に因んだ伊奈町があった(谷和原村と合併してつくばみらい市に)。また、忠治の父忠次は武蔵小室藩の祖で、小室藩の陣屋のあった場所は現在の埼玉県伊奈町である。親子2代が別の県の自治体の名称の由来となったというのは極めて珍しく、伊奈家の功績が関東に広く及んでいることがわかる。

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