数々の名著をもち、チャート分析の第一人者として知られる伊藤智洋氏が、これまでの研究と投資実践の集大成としてまとめたのが『株は1年に2回だけ売買する人がいちばん儲かる』。その要点はどこにあるのかを語ってもらいました。

個人投資家はカモにされている

株1年2回カバー私は、チャート分析やトレードなどで長年相場に関わってきましたが、個人投資家というのは常に、大口投資家からカモにされている存在だと感じています。

もちろん、個々の投資家それぞれの立場でみれば、「自分は儲かっている」という人もいるでしょう。しかし、大勢としては、まとまったお金を組織的に動かす機関投資家と、少額の資金でそれぞれが独立して動いている個人投資家では、象とアリの集団が戦っているようなもので、本当に不利な立場、ハンデを背負わされて戦っていることは明らかです。

まずはそういう現実を受け入れて、そのなかでいちばん効率的に儲けるためにはどうしたらよいのか、というのがこの本で伝えたかったことです。

相場がチャート分析どおりに動くときがある

私はある月刊誌に1993年から「相場の季節性」についての連載を書いていたのですが、その頃から膨大なデータを分析して、値動きのパターンというものを研究してきました。また、チャート分析についても、多くの著書を通じて考察、紹介してきました。そして結局、その二つは統合してとらえるべきである、という結論に達しました。

先ほど申し上げたように、大きな組織が職業として相場に関わっている以上、その動きはランダムではあり得ず、何らかの意図に基づいた一定の規則性や法則性が現れるのは当然です。

また、チャート分析というのは、そもそも相場に関わる人間の心理、すなわち「このポイントが意識されるはず」といったことを前提に、一定の経験則を抽出して値動きを予測するものですから、相場が意図的に動くとき(これを私はパワートレンドの状態と名づけています)にこそ、予測の確度が高まるのは当然なのです。