相手のことを思い丁寧に書いた文章。なのに「文章がおかしいよ」「文章が乱れている」などと、指摘されることがあります。それは気づかぬうちに、話し言葉の影響を受けているからかもしれません。話し言葉は時代と共に様々に変化し、今まで黒だったものが白に変わることさえあります。そのような、生み出されたばかりの言葉を文字として文章にのせると、違和感を生じさせる原因となるのです。
そんな話し言葉に影響を受けた文章を、『文章力の基本』(阿部紘久著)から見ていきましょう。

■「なります」

この言葉は間違った使い方の例として有名ですが、今でもお店で買い物をした時などに「こちらお釣りの○○円になります」というような言葉をよく聞きます。「です」と言えば良いのですが、丁寧な表現を使おうとして、思わず「なります」という言葉を使ってしまうのかも知れません。下記のように文章で使うとさらに強い違和感があります。

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■「いく」

最近は、さまざまな動詞に「いく(行く)」を付ける傾向があります。「頑張っていく」、「増えていく」は、継続する行為なのでいいのですが、「始めていく」「閉めていく」は誤った使い方です。なぜなら「始める」、「閉める」は一瞬で終わる動作だからです。

いく
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