去る4月2日(木)、港町横浜の「元町商店街」近くの会議室にて、著述家、経営コンサルタントである阪本啓一氏のセミナーが、50名ほどの中小企業経営者を集めて開かれました。阪本氏が「ビジネスサーフィン」と名付ける、商売の前提がコロコロ変わる環境において中小企業が「繁盛」するためにはどうすべきか?
本稿では、新著『繁盛したければ、「やらないこと」を決めなさい』の内容に沿って行われたセミナーの一部、おもに「ブランド」について語られた部分を掲載します。

ブランドは世界観にもとづいた「価値」を提供する

ブランドを構成する要素は8つあります。

『繁盛したければ「やらないこと」を決めなさい』88ページより
『繁盛したければ「やらないこと」を決めなさい』88ページより

一番大切なのは「世界観」です。それは、自分の会社が世の中でどういう役割を持ちたいのかということを表わすものです。

その世界観にもとづいた、お客さんに提供する価値が「ブランドエッセンス」です。世界観を具体的に表現し言語化したものでもあります。そのブランドを使うことによって、お客さんがどのように変化するか。決してブランドネームがブランドの価値ではありません。

また、価値は不変ではないことに注意しておく必要があります。価値は、時代によって増減したり、役割が変わったりするからです。たとえば、ひと昔前の商店街の価値は、「一カ所集中」でした。八百屋、肉屋、魚屋、洋品店、理髪店。商店街に行けば大体あった。でも今は、楽天などのネットショップや、駐車場やアミューズメント施設もある大型ショッピングモールに価値が移っています。商店街が復活するには、かつてとは違う価値を提供しなければならないでしょう。

「ブランド」は知覚である

P1000348ブランドとは何か。それは、お客さんが自ら集まる旗でないといけない。そのためには、よその会社が提供しない価値を届けなければならない。「くっきりした色の旗」です。お客さんから、グーグルで検索されているうちはまだまだと思うべきです。レッド・オーシャンの市場では、お客さんはこれまで蓄積した情報の中から秒速で脳内検索して商品を選んでいます。選ばれるためには、その脳内検索結果の最上位に来なければならない。人間は一番しか覚えていないんです。日本で二番目に高い山をほとんどの人が知らないように。それぞれのブランドが、ひとつしかない椅子をとりあっていると思ってください。

「南アルプスの天然水」はわたしたちにはおなじみの製品ですが、ドバイでは誰も知らない。これが何を意味するかというと、ブランドは製品の中ではなく、人の頭脳の中にあるということ。これがブランドの本質です。つまり「知覚」なんです。それは、それまでの顧客印象(インプレッション)の蓄積で、顧客の頭脳の中に形成されるものです。

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