人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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柳沢という名字

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2007/02/05 09:58

今年になってから、柳沢伯夫厚生労働大臣が、いろんな話題でマスコミをにぎわしている。

この「柳沢という」名字、全国順位では300位強あたりで、“普通の名字”という範疇にはいる。しかし、分布が大きく偏っており、東北や四国・九州などでは、かなり珍しい部類だろう。

ルーツはいくつかあるが、一番有名なのは、山梨県北杜市武川町にある地名。大河ドラマ「風林火山」で舞台になっている甲斐の武田氏の分家に一条家(公家の一条家とは別)という家がある。この分家に青木氏があり、そのさらに分家が、北杜市の柳沢というところに住んで、「柳沢」を名字としたのが祖。

武田一族からみれば、分家の分家の分家にすぎず、戦国時代は武川衆という家臣団の構成員の一員にすぎなかった。武田家滅亡後、柳沢本家は多くの武田遺臣とともに徳川家に仕えて一旗本となっていたが、江戸時代中期に柳沢吉保が出て、5代将軍綱吉の元で大出世をして、一躍大名の仲間入りを果たしている。長州藩士の柳沢家もこの一族で、現在でも柳沢姓の家は甲斐源氏の柳沢家の末裔と名乗ることが多い。

もちろん、これ以外の流れもある。「柳沢」とは、「柳の繁っている沢」という意味で、地名を調べてみると、長野県や新潟県には柳沢地名が多い。名字の方も、長野県に圧倒的に多く、長野では県ランキング第11位。その多くは、県内の地名をルーツとするものだろう。この他では、長野県と接している、新潟県・群馬県・埼玉県・山梨県・静岡県に多く、長野県から広がっていった可能性が高そうだ。

柳沢伯夫大臣は静岡県袋井市の出身。武田信玄の遺臣の末裔かどうかは定かでない。
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