人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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MVPの名字は「沢」?「澤」?

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2011/07/19 11:01

17日(日本時間18日未明)、サッカーの女子ワールドカップ決勝で、日本代表のなでしこジャパンがPK戦の末に米国を破り世界一となった。日本時間では未明の試合だったが、18日が祭日だったため、中継をみた人も多いのではないだろうか。1995年以来、5回目のW杯となるキャプテンの沢穂希は5得点をあげ、得点王とMVPを獲得した。

ところで、沢選手の表記が一部メディアによって割れていたのに気がついただろうか。
朝日新聞など、ほとんどの新聞では「沢穂希」と書かれているが、毎日新聞では「澤穂希」。テレビ局ではNHKが「澤穂希」という表記になっていた。

この「沢」と「澤」、別の漢字ではなく、字体の新旧の違い。歴史的には、もともとは「澤」だったが、やがて簡単な「沢」が使用されるようになり、戦後「沢」が新字体として採用されて「沢」に統一された。

しかし、戸籍上は明治初期に書かれたものが原本であるため、この時に手書きで書かれた字体が今もって正式である。つまり、名字的には、この2つには違いはない。

「沢」に限らず、「沢田」や「小沢」といった名字の人には、「戸籍上では澤だが、日常生活では沢」という人も多く、同じ人の漢字表記が割れることが多い。

ちなみに、日本サッカー協会や、所属するINACの公式サイトでは、いずれも「澤」。新聞各社では「用字の統一」という決まりがあって、それぞれ使用する漢字を限定しており、新旧字体の違いの場合は新字を使用することが多い。

沢選手も、戸籍上は「澤」なのだろう。
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