「買いどき・売りどき」を見極める

家の資産価値を、ときに立地や建物の性能以上に左右してしまうものがあります。それは、買うとき、売るときのタイミングです。

そこで質問です。家の買いどきは、景気の「良いとき」「悪いとき」のどちらでしょうか?

答えは「景気の悪いとき」です。

家の価格は、景気動向に応じて上下します。景気が悪いときに値下がりしている家を買って、景気が良く価格が上がっているときに売れば資産は拡大します。売買のタイミングは、家によって資産形成を考える場合にはとても重要なのです。

しかし、注意しなければならない点もあります。

まず、この原則が現在あてはまるのは、主に6大都市の中心部と周辺部、とりわけ東京都区部の家です。その他の地方は、景気変動よりも需要減の影響のほうが大きく、なかなか値上がりが期待しにくい傾向があるからです。

また、「売りどき」に売った直後には次の家を買うのは控えるべきでしょう。次に買う家も値段が高い時期なので、せっかく得た売却益が吹き飛んでしまうからです。景気の循環によって次に不景気になるまでの期間は賃貸住宅に住んで、購入を待ったほうが賢明です。

ただ、結婚や出産などのライフサイクルも考慮しなればなりませんし、景気予測の難しさは、大久保さんも「買いどき売りどきのタイミングを的確に予想することは、正直、現実的には難しいと思っています」と指摘する通りです。

とはいえ、ある程度の見込みを立てることはできます。大久保さんは本書で、自身の判断基準として3つの指標とその読み方をあげています。それは次のような式であらわされます。

買いどき=景気動向×価格動向×住宅の契約率

それぞれの指標は以下を参照します。

景気動向:内閣府発表の景気動向指数
価格動向:「不動産ジャパン」発表の相場取引動向
住宅の契約率:「不動産経済研究所」発表の住宅契約率

たとえば、契約率は70%を目安に好不調が分かれるので、次のような見方をします。

「住宅価格はまだ下がっているけれど、景気は上向きに転じ、これまで売行き不調だった契約率が70%を上回るようになったら、住宅価格もそのうち上がるので、売りどきが到来」といったように判断するのです。
(215ページ)


住宅需要が減っていくいまの時代でも、値上がりする家や、値下がり率の低い家を探すことはできます。プロの視点を参考にしていろいろな物件を見ていけば、「資産になるいい家」を見分ける目を養えることでしょう。