先にも述べたように、「私の存在に気づいて」という欲求は誰もが持つ本能的なものです。そのことは、イジメのなかで「無視される」ことが一番つらいとされていることからもわかります。
つまり、LAMSの要因は誰もが持っているものなのです。いいようのないさみしさを感じるのは、「自分に気づいて欲しい」という本能が満たされないために芽生える、ごく普通の感情だといえます。
LAMSは病気ではない
LAMSの人もそのことに気がつけば、さみしさを感じている自分を嫌悪したり否定したりせず、向き合うことができる。そうすれば心は落ち着きを取り戻し、「私を見て」という本能的欲求をコントロールできるようになる。
柿木氏は、LAMSは病気ではなく「状態」だと考えています。したがって薬を使った治療などは採用していません。
LAMSという心の状態を改善させるのは薬物ではなく、周囲の人の理解と、本人が自分の本当の気持ちに素直に向き合うことです。
LAMSのつらさは、「自分のことを誰も理解してくれない」という気持ちを本人が胸のうちにしまいこみ、それが自己嫌悪を生んでしまう悪循環に陥ることにあります。
「私を見て」「私の存在に気づいて」という欲求が、生きるために食べ物を求めるような、自然で本能的なものであることを本人が理解すれば、悪循環から抜け出す助けになるでしょう。そのためには本人も、周囲も、LAMSという概念を知ることが大事なのです。
『読むだけでさみしい心が落ち着く本 Look at me症候群の処方せん』の「はじめに」で、柿木氏はこう述べています。
LAMSで苦しんでいる方がこの本を読んで、自分は決して病気なのではなく、本能に基づいた状態であり、LAMSという概念を知ることにより、自分自身を知ることができれば、大きな救いになるでしょう。
(11ページより)
さみしく、不安定な気持ちから抜け出せない人にとって、この本が自分と向き合うきっかけになるかもしれません。