雑損控除を受けるときに必要な書類

雑損控除の適用を受けるときは確定申告書のほか、「罹災(りさい)証明書」などの災害にあったことの証明書や盗難にあったことの証明書、「損失額の明細書」と「災害等関連支出の領収書」を添付しなければなりません。各種証明書の交付場所は役所や消防署、警察など各自治体によって異なりますので、事前の確認が必要です。

「損失額の明細書」については、決まった書式がありませんので各自で作成する必要があります。詳しくは本記事の後の項目で解説します。

対象金額の算定

zasson_keisan雑損金額の対象になる金額は、右図の1・2のうち大きいほうの金額になります。ここで注意したいのは1にある「損害金額」が新品時の価格ではなく、被害に遭った時点における価格になることです。

つまり、被害にあった品物を今買ったらいくらになるか、という「再取得価格」からその品物をこれまで使用したことによる「減価償却相当分」を差し引いた金額が損害金額となります。

なお、「損失が生じた日にその減価資産を譲渡したもの」とみなして計算した取得費相当額を基礎として、簿価ベースで損失金額を算出することも可とされています。

被害に関連してかかった費用(災害等関連支出)

雑損控除で申告する際は、直接被害にあった費用だけではなく、以下のような災害に関連して支出をせまられた費用(災害等関連支出)も控除の対象になります。

  • 災害により壊れた住宅・家財の取り壊し費用
  • 損害を受けた家屋などの原状回復のための修繕費(被害前より価値が高まるような費用はダメ)
  • 白アリ被害による床板や柱などの取り替え費用や、薬剤散布などの駆除費用
    (日常生活をおくっている家屋のみ。別荘など、生活上不要とされる施設は対象外)
  • 被害がでると予想されるときの対策処置費用(例:豪雪地帯における雪おろし費用)

この他にも、盗難被害を受けたときの窓ガラスや鍵・タンスなどの破損や、カーペット・衣服の汚損なども対象となり、消費税込みの金額で計算することが可能です。また、これら関連支出を損失額に含める場合、その支出の領収書を申告書に添付する必要があるので、家屋の取り壊しや改築時の領収書を集めておく必要があります。

災害減免法との選択

被害を受けた人のうち、年間所得1000万円以下の場合は雑損控除ではなく「災害減免法」の適用を選択することができます。災害減免法を選択するには、次の要件を満たす必要があります。

  • 住宅や家財が災害により損害を受けた(盗難・横領による損害はダメ)
  • 所得金額が1000万円以下
  • 保険などによる補てんを除いた正味の損害金額が、住宅や家財の時価の50%以上

これらの要件に当てはまれば所得税が一定の割合で減免され、その額は下の表のようになります。しかし、雑損控除と災害減免法はいっしょに受けることはできません。どちらがトクかはケースによって異なるので、計算をしたうえで有利なほうを選択してください。

所得金額所得税の軽減額
 災害減免法で免除される所得税額
500万円以下 全額
500万円超~750万円以下 2分の1の軽減
750万円超~1000万円以下 4分の1の軽減

控除の対象期間と繰り越し

通常、確定申告は申告を行なう前年(例:平成28年の申告なら、27年1月1日~12月31日)中の所得・支出に関して行ないます。しかし、災害等関連支出については、前年中に損害を受けた場合なら、年明けから申告を行なう年の申告期限前日(例:平成28年であれば、3月15日)までの支出も雑損控除額に含めることができます