「人工知能」が究極的に進化した未来は、「アトム」や「ドラえもん」のような存在が、パートナーとして人類を助けてくれる平穏な世界なのでしょうか。それとも「ターミネーター」と人類が、その存在を賭けて戦いを繰り広げるような、乱世なのでしょうか。
それほどのことはないとしても、人工知能に仕事が奪われるかも?

人工知能とは人類にとっての脅威となるのか?
これからどう付き合っていけばいいのか?

その問いに脳科学者・茂木健一郎氏が答えた書籍が、『人工知能に負けない脳』。その担当編集者が、本書を解説します。

「人工知能の進化は、人類の終焉を意味する」(スティーブン・ホーキング博士)

「人工知能によって核兵器より危険な状況が起こるかもしれない」(イーロン・マスク)

世界的に著名な科学者や経営者が、人工知能が人類にとって危険な存在になり得ると警鐘を鳴らしています。また、人工知能の発達・普及によって、多くの人がその職を失うだろうというショッキングな論文も発表され、世界中から注目を集めました。

何かと物議をかもしている人工知能ですが、みなさんも内心、心配になってきているのではないでしょうか。でも大丈夫、ご安心ください。脳科学者・茂木健一郎先生は、人工知能の進化は、私たちにとってピンチどころか、むしろチャンスなのだと述べています。

では、どうすれば人工知能の進化を私たちのチャンスにできるのか? 人間にとって人工知能という存在を脅威ではなく味方にするにはどうすればいいのか? 茂木先生の最新刊『人工知能に負けない脳』から、その答えを探ってみることにしましょう。

人工知能とはどのような存在か?

それにしても、チェスの世界チャンピオンがコンピューターに敗れたり、IBM社が開発した人工知能「ワトソン」がアメリカで人気の雑学クイズ番組「ジョパディ!」で最高金額を獲得したりと、人工知能の進化はそのスピードを加速しているように見えます。

人工知能が人間の知能を追い越す「シンギュラリティ(技術的特異点)」が、今後30年の間に現実となるだろう、そのとき私たちの社会や暮らしはどのように変わるのか? といういわゆる「2045年問題」が、欧米を中心に真剣に議論されているのもうなずけます。

それを支えているのは、簡単にいえばコンピューターのCPUパワーがどんどん上がっていることと、「ディープラーニング」という新たなソフトウェア技術なのですが、すごいのは自分で自分自身を書き換えて自動的に改良していくアルゴリズムなのだといいます。

だから、シンギュラリティは間違いなく起こる、と茂木先生は断言します。ただし、SF映画などに見られるような、人間みたいな感情や意思をもったコンピューターが登場するわけではありません。いわば、特定の能力だけが飛躍的に高い存在、それが人工知能です。

たとえて言えば、ウサイン・ボルトがいくら速くとも、リニアモーターカーに敵うはずはありません。だからといって、リニアモーターカーが人間のような感情や意思をもつことはありえません。この両者の関係性を、人間と人工知能にもたとえることができます。

知能指数(IQ)でいえば、かの天才・アインシュタインが180といわれました。しかし、人工知能のIQは、あえて示せば4000というような破格のレベルになるのだとか。要するに、人間と人工知能を比較すること自体がナンセンスになってしまう世界なのです。