「日本人は傾向として現状維持が好きです。現状で何とかできているモノを変えようとするのは、よほどのことがないとやらない」

しかし、この傾向が日本人のものだけかというと、そんなことはありません。ルイス・ガースナーは、米IBMが1992年に米国ビジネス史上最大の赤字を出して破産寸前になった時に、外部から呼ばれた社長です。しかも、ナビスコという食料品メーカーから。

「クッキーを作っていた会社の人間が、IBMを経営できるのか」と疑問視されましたが、18万人を人員削減するとともに、それまでモノ、機械を売っていた会社を、サービスを売る会社に転換させた。彼も、川村氏と同じようなことをいっています。

「変化を好む人はあまりいませんし、ほとんどの人は変化を恐れるがゆえに変わろうとしません」と。

なぜ人間は、こんなにも変化を嫌うのでしょうか。

あなたの会社の老化度は?

その話をする前に「会社の老化度」について話をしたいと思います。

『日経ビジネス』誌は2013年の末に「会社の寿命」という特集を掲載しました。この特集で、時価総額上位100社を10年ごとに調査して、平均でどれくらいの期間、100位以内にとどまっていられるかを算出した。その期間は18.07年でしたが、これ自体は驚く数字ではないでしょう。会社が最も輝いている旬な期間としては、妥当なものではないかと思います。

一方、会社の「平均生存期間」も出しました。それが34.9年だというんです。旬な時期は18年です。では、輝きを失った16年を、会社はどのように過ごすのか。ただ死ぬのを待つのか、なんとなくかろうじて生きているのか。この数字のほうが、私にはショックに思えたんですね。

この特集の一部にあったのが、「会社の老化度チェックシート」です。ここではその30の項目の中から、特に、変化を嫌う、リスクを嫌う、現状維持が好きという、人間の基本的傾向に密接に関わる項目を8つ挙げてみました。ご自分の会社に当てはまる度合いに応じて、1点~5点をつけてみてください。

・1点=「当てはまらない」
・2,3,4点=「どちらでもない」が、数字が大きくなるにつれて「当てはまる」に近い
・5点=「当てはまる」

1. 意思決定に必要なのは前例と実績である
2. 「やるリスク」は真っ先に論じられるが「やらないリスク」は論じられない
3. 「できない理由」が得意な社員が多い
4. CCメールなど、読まないメールが大量に来る
5. 「変わった人」は迫害される企業文化である
6. 「誰が信頼できるか」より「誰が担当者か」が重要である
7. 「言いだしっぺ」は損をする
8. 他責で依存心の強い、なんでも他人と会社のせいにする社員が多い

(日経BP社『日経ビジネス』2013年11月4号より抜粋)