──視野を広く、ということですね。

ひとつのことだけこだわっていてはだめです。嫌いな人だとなったらその人が何を言ったって嫌だし、そのことばかり考えて嫌な気持ちになる。いい人や仲間はいっぱいいるんだから、狭い世界に自らを閉じ込めないことですね。

「絶対にくじけないぞ」では疲れてしまう

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『校長先生、企業を救う』

──「火が消えそうな」ご自分の部下の方や先生方にも、そのようなアドバイスを?

私は朝礼をとても大事にしているんですが、なぜかというと、教員たちがそんな状態になることを未然に防ぎたいからなんです。毎朝教員たちの様子をチェックして、ちょっと疲れているなとか具合が悪そうだなと感じたら、まわりの人を呼んでその人を元気づけてくれるようにお願いします。子どもたちに対してもそうですね。担任の先生は、教壇から見たときに生徒の状態がすぐわかりますから、同じように、まわりの子に頼みます。会社でいえば、上司は部下の状態をいつも気にかけることですね。

──それでも消えそうになったら?

飲みに連れて行きます(笑)。以前はそういうことを否定していましたが、いくら格好つけたって、結局私たちは浪花節の世界に生きてるんですね(笑)。みんな、聞いてあげるだけで安心しますから。相手の言うことにこちらが賛同しかねても、とにかく聞いてあげる。そのときは、自分に対する罵詈雑言が出てきても、仕方ないと我慢します。

それに、誰でもすぐくじけるんだから、あまり思い悩まずにくじければいいんです、無理しないで。絶対くじけないぞ、なんて頑張っていたら疲れてしまいますから。そのほうがすぐ立ち直れます。

──部下指導について、そのほかに気をつけるべきことはありますか?

できるだけほめることです。よく、ほめればほめるほど人のモチベーションは上がるといいますが、これは科学的根拠に基づいています。

前頭葉のある部分にある「スピンドルニューロン」というのは幸せを感じると伸びる神経細胞ですが、これが伸びていくと前向きになって、ストレスにも強くなる。管理職の方々は部下をどんどんほめてあげてください。管理職をほめる役割は社長ですね。ところが日本人の社長は照れ屋なのか、なかなか部下をほめない(笑)。

ただし、明らかに間違っていることはしっかり指摘して叱らなければダメです。なぜなら、人はいくつになっても変わることができるから。いい方向に持っていくように関与してみることです。

組織のベクトルを揃えるには

──本書に出てくる「理想の組織をつくる6つのポイント」の最初に「同じベクトルで仕事をする」ことをあげておられます。メンバーのベクトルを揃えるのに苦労したことはありますか?