人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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大原海岸と日在浦

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2007/05/07 09:21

ゴールデンウィーク中に、人ごみをさけて外房の大原海岸に行ってきた。

自宅のある川崎市北部からは、アクアラインを通って木更津に渡るわけだが、ちょうど大潮ということもあり、潮干狩り客で木更津までは大渋滞。木更津を抜けると急激に人が減り、房総横断道路という名前ばかり立派な田舎道を走ると外房の大原に出る。

大原町という名前は平成の合併で消滅し、いまでは「いすみ市」という名前になってしまった。どうせなら「夷隅市」と由緒ある表記にして欲しかったものだ。夷隅とは延喜式にも出ている古い地名で、古代には「伊甚(いじみ)国」だったところだ。古事記には「伊自牟国」として登場する。たしかに大多喜付近には古墳群もあり、古代から栄えていたことが窺われる。
さて、夏には海水浴客で賑わう大原海岸も、この季節には海岸で砂遊びをする子どもと、サーファーのみの閑散とした風景だ。というより、最近では海水浴よりも、サーフィンで有名かもしれない。


ところで、一般に大原海岸といわれるこの海岸、実は日在(ひあり)浦という。「日在」とは、日(陽)がいつでも在るという意味。実際、このあたりは犬吠埼とともに、本州で一番日の出の早い地域である。昔は日の出が一日の始まり。日の出が早いということは、それだけ一日が長いということを意味した。

ここには文豪森鴎外が別荘を建て、しばしば訪れて滞在していた。今でも子孫が別荘を所有しているはずだ。また、林芙美子の「放浪記」にちなむ文学碑も建っている。

仕事があるため、地元の伊勢海老料理を食べてから各駅停車の電車に乗ったが、それでもその日のうちには自宅にたどりつけた。計算すると、車よりも電車の方が所要時間は短いのだった。このあたりも、文人が避暑に訪れた理由であろう。
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