人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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三ヶ日の「ヶ」

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2007/02/26 09:15

今年の3月3日、「三」にちなんで、三ヶ日の地名が変わる。

「三ヶ日」とは静岡県西部にある地名。地元の人以外には、「三ヶ日みかん」が一番知られているのではないだろうか。ところで、この「ヶ」の字の大きさに注目したことがあるだろうか。東京には「ヶ」のつく地名がいくつかあり、市ヶ谷、阿佐ヶ谷など、小さな「ヶ」を使うことが多い。全国的にみても、「ヶ」の方が主流だと思われる。

ところが、三ヶ日の「ヶ」の字は、大きな「ケ」だったのだ。

もともとは、小さい「ヶ」を使用した三ヶ日町だったが、昭和30年に東浜名村と合併した際に、なぜか「三ケ日町」と、大きな「ケ」に変更されて国に登録されてしまった。町のに残っている書類ではすべて従来通りの小さな「ヶ」になっており、どうやら合併を処理した国の担当者が間違えたのでは、という説が有力らしい。

理由はともかく、国に正式に告示されてしまった以上いかんともしがたく、この日を境に三ヶ日町は三ケ日町に変更してしまったのだ。しかし住民は「三ヶ日」を使い続け、正式町名と実態が合わなくなっていた。名産のみかんも「三ヶ日みかん」として小さな「ヶ」で売り出している。

以来50年、本名「ケ」、通称「ヶ」という状態が続いた。そして平成17年、三ケ日町は浜松市の大合併に参加してその一部となり、「ケ」のまま幕を閉じた。

地名は、そのまま浜松市三ケ日として引き継がれたが、ここで「ヶ」問題が再燃したのだ。独立した自治体だった頃は、名称の変更は繁雑だったが、市内の一地名となってしまえば、届け出を出すだけで済む。そこで、昨年の9月の浜松市議会で地名の変更が議決され、市長が知事に届け出を出して、今年3月からめでたく元の「三ヶ日」に戻ることになった。
市町村合併の予想外の効果、ともいえる。
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