人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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北朝鮮とマツタケ

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2006/10/16 11:19

 核実験を機に、北朝鮮との貿易が停止し、マツタケの値段に影響が出ているようだ。マツタケはいわずと知れた高級食材。国内産はあまりにも高くて手がでず、一般に出まわっているものは外国からの輸入物が多い。
 マツタケは養殖が困難なため、山に生えているものを収穫するしかない。マツタケそのものは、東アジアに広く自生するキノコだが、日本以外ではあまり食用にしないため、日本だけで高い。そのため、朝鮮半島や中国では、専ら日本向けに採取して輸出している。
 一般に、国産のマツタケと輸入物は味が違うという。これは種類が違うのではなく、採取してからの時間の経過による新鮮度の問題。国産だろうが、中国産だろうが、北朝鮮産だろうが、生物学的には同じもので、現地で食べれば同じ味がするはずだ。

 さて、庶民には高嶺の花の国産マツタケ、国内の生産量トップはどこかご存知だろうか。実は広島県が一番多く、次が長野県。高級な丹波松茸で有名な丹波町のある京都府は、出荷量自体はそれほど多くない。少ないからこそ、高級であるともいえる。
 丹波町は京都市の西北にある高原の町で、ここは、丹波松茸の他にも、丹波黒といわれる黒豆、丹波栗など、高級な食材の供給地として有名だ。この小さな町でこれほど多くの有名な食材が出る理由は、おそらく京都という高級食材の一大消費地を控えているからだろう。古くから、京と山陰を結ぶ交通の要衝でもあり、山陰道を通って、これらの食材が都に運ばれ、貴族や豪商達の食卓を賑わせてきたに違いない。

 なお、丹波町は平成17年10月に瑞穂町・和知町と合併して、京丹波町と改称している。平成の大合併では、似たような規模の自治体が合併する際には、全く新しい名前を採用することが多いが、ここでは「京」の名を冠しただけで、「丹波町」という名称を残した。その背景にはやはり、これらの食材の供給地であることを名言したい、という意志のあらわれなのだろう。
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