人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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七夕の名字

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2006/07/10 11:54

 7月7日は「七夕」。この時期、沖縄を除いては梅雨の真っ最中で、雨が降ることが多い。どうしてこの時期に、という疑問を持つ人も多いが、本来の七夕は旧暦のため、ほぼ1ヶ月遅れ。今の暦でいえば8月の上旬で、夏真っ盛りの時期である。
 さて、このコラム本来の名字に目を転じると、「七夕」という名字があることをご存じだろうか。ものすごく稀少、というわけではないが、特定の地域に集中しているため、なかなか目にする機会は少ない。「七夕」姓は鹿児島県独特のもので、薩摩半島南端の指宿市にかたまっている。その中でもかつて“怪物イッシー”で話題になった池田湖にほど近い、旧開聞町の仙田地区に集中している。
 話は脱線するが、池田湖は胴回り50cmという名物大鰻でも有名で、この付近には「鰻」という名字もある。なんでも西郷隆盛が命名した名字というが、真偽のほどは定かでない。
 さて、この「七夕」から派生して生まれた名字もある。北関東に点在する「七部」という名字で、特に水戸市と足利市に多い。読み方はなんと「たなべ」。つまり、「七夕」で「たなばた」と読むのなら、「七」の部分だけだと「たな」になるはずだ、ということだ(すると、「夕」は「ばた」?)。
 近世では、本家と分家で名字を少しだけ変えることがよくあった。その際、読み方を変えると全く別の家系のように感じるため、読みはそのままで漢字だけ変化させることが多かった。おそらく、七部家も元々は田辺家だったのだろう。かつて分家した際、分家の当主が機知に富んだ人で、「七部」という独創的な名字を産み出したような気がする。
 似たような例としては、「服部」に由来する「部田(とりた)」や「部谷(とりたに)」、「日下部」に由来する「日馬(くさま)」などがある。
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