人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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名字でみるナショナルチームの移民

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2006/06/19 10:37

 W杯の一次予選も佳境を迎えてきた。クロアチアと引き分けた日本の決勝トーナメント進出はもはや非常に厳しい。F組では予想通りブラジルが2連勝して予選突破を決めたが、ブラジルと並んで前評判の高いホスト国ドイツもA組で2連勝して大会一番乗りで一次リーグ突破を決めている。
 W杯はいうまでもなく国別の対抗戦。出場する選手はその国の選手に限られている。最近は野球でも各国のリーグを渡り歩く選手が増えてきたが、世界中にプロリーグのあるサッカーでは、外国のチームに参加するのはごく普通のこと。一流選手はW杯の時にだけ母国に戻ってナショナルチームに参加する。
 しかし、最近では国籍があるからといって、代々その国の人とは限らない。近年は移民による代表も多いからだ。たとえばドイツ。予選突破を決めたポーランド戦をみても、フリドリーヒやシュナイダーといった、いかにもドイツ人、という名字がある一方で、どうみてもドイツ人らしからぬ名字もある。
 FWのポドルスキ(Podolski)選手はFCケルンの生え抜き選手だが、その名字がドイツ人のものでないことはあきらか。日本では、「〜スキー」という名字はロシアを代表する名字という印象が強い。しかし、実際にはロシア全土でみると、それほど多いわけではない。「〜スキー」という名字はポーランド系の名字で、ロシアでは地域的な偏りがあるあるのだ。また、ロシアでは「〜skii」と書いて、「〜スキー」と伸ばすのに対し、ポーランドでは「〜ski」となり、日本でも「〜スキ」ということが多い。ポーランドの初代大統領も「Jaruzelski」で「ヤルゼルスキ」といわれていた。ポドルスキ選手も「〜ski」という名字のとおり、ポーランドからの移民である。同じくFWで、初戦で2ゴールをあげたクローゼ(Klose)選手もポーランドからの移民。
 ポーランド戦で決勝点をいれたヌビル(Neuville)選手の名字も、どうみてもフランス系で、本来は「ヌヴィーユ」という発音ではないだろうか。ためしにGoogleで「Neuville」と検索すると、同名のパリのホテルがヒットする。ヌビル選手自身はスイス生まれで、父がドイツ人で母はイタリア人というから、もう「〜人」という範疇ではおさまりきらない。
 この他にも、オドンコア(Odonkor)、アサモア(Asamoah)という欧米らしからぬ名字も見える。両選手ともアフリカのガーナ出身のようだ。
 日本代表の三都主選手も英文表記は「Alex Santos」。その名字からラテン系の出身であることは一目瞭然だろう。
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