人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

●サイト(オフィス・モリオカ)
  → https://office-morioka.com/
●ツイッター
  → http://twitter.com/h_morioka
●facebookページ
  → https://www.facebook.com/officemorioka/
●Instagram
 → https://www.instagram.com/office_morioka/

 

小沢と菅

このエントリーをはてなブックマークに追加

2006/04/10 09:35

 7日に行われた民主党の代表選挙では、自由党出身の小沢一郎が、菅直人を破って代表の座についた。いつものように、このブログでは政治的なことにはふれず、両者の名字についてみてみよう。
 小沢という名字はポビュラーな名字だが、意外と西日本には少なく、全国順位は200位前後。特に、山梨県や静岡県に多く、山梨県ではベスト30にも入っている。名字の由来は小沢という地名と、「小さい沢」という地形の両方のため、ルーツは各地にあるといえる。地名由来があるとはいっても、小沢という地名も、もとは「小さい沢」がルーツだろうから、すべて地形由来ともいえる。
 歴史的に有名な小沢氏としては、川崎市多摩区の地名をルーツとした小沢氏が知られる。桓武平氏の末裔で、鎌倉幕府の公式書である「吾妻鑑」にも、小沢小太郎という名が見える。室町時代には京王稲田堤駅にある、小沢城の城主でもあった。
 小沢一郎の地元の岩手県では、江刺市にあった鶴羽毛城の城主に小沢氏があったことが知られている。小沢一郎は水沢市(現在は奥州市)の生まれで、江刺市とは近い。何か関係があるかも知れない。
 一方、代表選に敗れて代表代行の座についた菅直人の「菅」という名字は、菅原氏の末裔。菅原氏は平安時代後期に朝廷での実力が衰え、一族は地方に降っていった。その際、「菅原」の名字でいた一族も多いが、「菅原家」を中国風にした「菅家(かんけ)」や、もっと単純に縮めた「菅」を名乗ったものも多い。
 西日本では「菅」とした一族が多く、戦国時代には瀬戸内海で水軍を率いて活躍した菅平右衛門という武将もいた。現在でも瀬戸内海付近沿岸では「菅」姓が多く、愛媛県の大三島では島で一番多い名字が「菅」である。
 菅直人の選挙区は東京の多摩地区だが、出身地は山口県で、父親は岡山県の出。瀬戸内海に広がった菅一族の末裔であろう。
このエントリーをはてなブックマークに追加

ページのトップへ