人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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高校野球選手の名字

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2006/04/03 09:32

 2日に予定されていたセンバツの準決勝は雨のため、今日3日に順延となった。日曜日に観戦を楽しみにしていたファンには残念だが、連戦の続く選手たちには恵みの雨かもしれない。
 さて、勝ち残った4校は対照的なチームカラーとなった。全国から優秀な少年野球選手を集めた、東西のエリート校の頂点に立つ横浜高とPL学園高に対し、対戦相手はともに普通の県立高校2校。PL学園高出身のプロ野球選手は引退選手まで含めると実に70人を超えており、横浜高とともにOBだけでプロチームができる、といわれている一方、岐阜城北高や清峰高出身のプロ野球選手は史上一人もいない。
 この違いは選手の名字をみてもよくわかる。エリート校の選手名簿をみても、どの県の代表かはわからないが、地元選手で固めた県立高校は、いかにもという名字が多く、何県代表かはすぐにわかる。
 たとえば、今大会屈指の投手の一人である岐阜城北高の尾藤投手。「尾藤」という名字は、「加藤」や「伊藤」と同じく藤原氏の末裔で、「尾藤」は、「尾張」の「藤原」という意味。岐阜県南部と愛知県の尾張地方は一体化しており、岐阜もご当地の一部といってもよい。背番号7の「丹羽」も濃尾平野を代表する名字。控え投手の「種田」は「おいだ」と読むが、これも岐阜県南部の特徴的な名字の一つだ。背番号12の「長屋」は、岐阜県の旧板取村で人口の6割を占める名字として全国的に有名だった(板取村は平成の大合併で消滅した)。
 一方の清峰高校。こちらは長崎県北部の佐々町にある小さな県立高校で、選手は本当に周辺出身者のみだ。三振より四死球の多い有迫投手。「迫」という漢字の入った名字は九州が本場で、特に鹿児島と長崎に多い。主将の「広滝」や、三塁の「佐々田」も、他では珍しい。
 極めつけは背番号11の「小佐々」。「こささ」ではなく「こさざ」と濁る。出身地は佐々町の隣にある小佐々町で、出身中学は小佐々中。戦国時代、同地には小佐々城があり、城主として小佐々氏がいたことが知られている。おそらく、数百年にわたって同地に住み続けているのであろう。

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