人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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「平清盛」と伊藤さんのルーツ

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2012/01/16 10:41

大河ドラマ「平清盛」の時代は、平安末期から鎌倉時代初期にかけての、武士が貴族から政権を奪った時代である。

この時代、各地で武士が台頭し、貴族の領していた土地を実力で支配し始めた。彼らは自分の支配している土地を明確にするために、土地の名前=地名を名字として名乗った。これが名字のルーツの大きな流れの1つである。

従って、「平家物語」を読んでいても、現在のいろいろな名字の祖となった人物が数多く登場する。ドラマ「平清盛」でも、そうした人物が次々と出てくるはずだ。

15日の「平家物語」では、清盛元服の場面で伊藤忠清という人物が登場した。この伊藤忠清は、伊藤氏の祖から数えて4代目にあたる人物である。

武士となったのは源氏や平氏だけではない。藤原氏でも摂関家と呼ばれた本家から遠く離れた一族は、地方に降って武士化した。彼らも地名を名字としたが、「名門藤原氏の末裔」であることを強調するために、あえて「藤」という漢字を取り入れた名字を名乗ったものも多い。

伊藤氏とは「伊勢の藤原氏」という意味である。藤原秀郷の末裔である基景が、伊勢守となって伊勢に土着し、伊藤氏を称したのが祖。伊勢に住んでいたため、代々伊勢平氏に従っていた。ドラマで忠清が「伊勢から来た」と言っているのは、このことを踏まえている。

伊藤氏系図
伊藤氏系図

忠清はこのあと、保元の乱や平治の乱でも活躍するので、伊藤さんは必見。

ちなみに、「伊藤」という名字は、今でも伊勢地方に激しく集中している。とくに三重県北部では圧倒的な最多姓である。

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