人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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辰のつく名字

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2011/12/26 11:29

今年も最後は来年の干支にちなむ名字。

来年の干支は「辰」。「辰」のつく名字は多い。最もおおいのは「たつみ」だ。

「たつみ」は方角に由来する名字。北を「子」として方位を十二等分し、干支を割り振ると、東南東が「辰」で、南南東が「巳」となる。その中間の南東の方角は「辰」と「巳」の中間で「たつみの方角」と言った。

村の中心地や、庄屋・領主などの屋敷からみて、東南の方角に住んでいた人が名乗ったのが「たつみ」さんである。「たつみ」は「辰巳」だが、漢字一字で「巽」とも書いた。

ところが、名字では「巳」の代わりに「己」を使用した「辰己」が最も多く、次いで漢字一字の「巽」で、ともに全国ランキングの1400位台。本来の「辰己」は2000位をちょっと下回るあたりとなっている。いずれも、奈良県を中心に関西一帯に広がっている。

「たつみ」の次いで多いのが「辰野」で、全国順位では4000位台。以下、「辰田」「辰本」「辰見」「辰口」「辰井」「辰川」「辰島」と続く。

これ以外は珍しい名字の部類となるが、「辰尾」「辰馬」「辰村」「辰元」などはときどき見かけることがある。

このうち、「辰馬」は兵庫県西宮の名家である。「白鹿」「白鷹」で知られる酒造家で、江戸時代には金融業も手掛ける関西を代表する豪商でもあった。明治維新後は教育界にも進出し、京大進学で有名な甲陽学院の経営者でもある。
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