人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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出雲の小汀さん

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2009/01/26 09:56

21日のオバマ大統領の就任の前日、今度は山陰のテレビ局から問合せがあった。内容は、松江にある「小汀」という名字についてのもの。

「小汀」姓は、島根県の出雲地方独特の名字で、これで「おばま」と読むかなり珍しいもの。全国でも30世帯ほどしかないだろう。ただ、ジャーナリストに「小汀利得」という人物がいたことから、年配の方では「おばま」と読める人は意外と多いかもしれない。

「汀」という漢字は「みぎわ」と読み、「はま」という読み方はない。しかし、「みぎわ」とは「水際」のことで、意味的には「浜」と同じである。「日本書紀」の国引き神話に「五十田狭の小汀」という記述があり、今の出雲市の旧大社町稲佐海岸と推定されている。おそらくここが「小汀」さんのルーツの地。同じ場所が、古事記では「伊那佐の小濱」と書かれており、「小汀」と「小浜」が同じ意味で使われていることがわかる。

ところで、「小汀」という名字、数の上では、出雲地方と東京周辺は同じくらい。では東京周辺にもう一つ別の系統の「小汀」一族があるのか、というとそうではないだろう。前述の小汀利得の他、出版社の社長をつとめた小汀良久という人物もいた。元々の数が少ないだけに、著名人が複数東京で活躍すると、その子どもや孫も東京近郊に住むことが多く、「小汀」さん全体に占める首都圏在住の比率が上がってしまうのだ。

同じような例としては、ルーツの富山よりも、明治時代に移住した北海道の方に多くなってしまった「鉢呂」などがある。
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