人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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井上さんのルーツ

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2008/10/14 09:17

先週須坂に行ったついでに、長野電鉄の屋代線に乗り換えて、一つとなりの井上駅に寄ってみた。

長野電鉄は信州中野を経て、湯田中に行く方が幹線で、須坂から屋代に伸びる屋代線はローカル線だ。2両編成の各駅停車で4分ほど乗ったところに井上駅があった。無人駅で、駅を出ても駅前には商店もない。ここは、井上さんのルーツの一つである。

「井上」という名字は、地形由来の名字で、全国にたくさんのルーツがある。そのうち、一番有名なのが、地名にもなっている須坂市井上をルーツとするものだ。

ここをルーツとする井上氏は清和源氏の流れ。平安時代後期、平忠常の乱を平定した源頼信は、三男の頼季を信濃国井上においた。この子孫が井上氏で、以来ここを本拠地として発展し、子孫は北信濃の高井郡・水内郡に勢力を拡げていった。

室町時代には村上氏に属し、武田信玄の信濃侵攻で越後に逃れ、その後上杉景勝の会津移封とともに、嫡流は会津に転じた。一族には播磨井上氏と安芸井上氏があり、長州藩出身の明治の政治家井上馨は、安芸井上氏の末裔である。

今回は時間がなくて行くことができなかったが、近くには井上氏館跡や井上氏墳墓なども残っている。北信濃を訪れる井上さんは、少し寄り道をしてみるのもおもしろい。なお、屋代線は本数が少ないので要注意。車だと、上信越自動車道の須坂長野東インターで降りるとすぐ近くである。
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