本コラムは日本実業出版社が発行、エヌ・ジェイ出版販売株式会社が販売する企業向け直販月刊誌「企業実務」内に掲載されているコラムを転載したものです。
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2018/08/23 11:19
企業の経理・総務担当者が職場で直面する、規定集・法規集などに答えが見当たらない疑問、状況がレアケースすぎてそのまま規定を当てはめていいのかどうか迷う悩みに、プロの実務家・専門家が答えます!
※本コラムの内容について※
本コラムは、月刊「企業実務」内で連載されている同名の連載を再編集したものであり、関連法規・規定等については公開時点のものに準拠しています。
従業員50名の部品製造会社です。親会社から継続雇用のために定年退職者を嘱託で受け入れてもらえないか、という打診がありました。基本的には承諾するつもりですが、受入れにあたっての留意点をご教示ください。
人材不足の折、取引先から人的支援があるのは何よりです。とはいえ、日本の最有力企業から大物出向者を受け入れたものの、3か月で執行役員から退任されてしまった100人企業の例もあり、安心はできません。
まず、各種要件・条件をどう考えているかについて、親会社だけでなく本人にも確認してください。賃金もですが、担当希望業務から各種の雇用・労働条件まで幅広く聞くことが肝要です。雇用を続け、移籍者・受入企業ともwin-winの関係となることが最大課題だからです。
専門技能はあっても、指導できる資質がある人材なのかは重要です。移籍前が大企業であればあるほど、中小企業のような「何でも」対応できる人は存在しません。高い専門性は持つのですが、中小企業が期待するようなオールマイティな対応はできないということです。
品質の専門家は生産管理の専門家ではなく、中小企業が期待する工場長の役割を果たせる人は少ないということです。移籍後、何を担当いただくのか、貴社の希望とズレがあってはいけません。
さらに確認いただきたいのが、移籍者の意思です。何年、何歳くらいまで働きたいのか、また働かざるを得ないのか、働けるのか。自宅ローン返済の終了時期やご家族と本人の健康問題、また、通勤に要する時間等です。
これらが双方納得できてから、各種の労務上の留意点となります。常勤希望かどうか、非常勤なら週何日あるいは月にどの程度を想定しているのか。また、賃金はどの程度を希望しているのか。定年で出向ではありませんから、親会社は賃金負担はしません。担当業務により、支払いにも差が出るのは当然です。大企業出身者の場合、責任ある立場は避けたいとか、週2〜3日程度や短時間の勤務を希望される場合も多いでしょう。
移籍先の中小企業は、どうしてもその移籍者に頼りがちになりますが、何を期待するのか勤務形態と合わせて再確認が必要です。
労働条件に付随する点は前述のとおりですが、最も重要なことは、移籍予定者の人柄や能力・スキルの面です。これは直接本人に会って、貴社のトップと人事の責任者とで多角的に評価いただきたいと思います。相性というものもありますし、本人の申告とは異なる能力に気づくことがあります。
それとも、すでに貴社と関係あり、活躍が安心できる人材なのでしょうか。その場合であれば、労務上の条件交渉だけをしっかりすればよいと思われます(企業実務 16年11月号より転載)。
一般社団法人中部産業連盟主幹コンサルタント。経営戦略、人事、人材開発の専門家として大企業から中小企業までの指導・研修を担当。『チームで取り組む問題解決の考え方・すすめ方』等の著書がある。
この4月から管理部長として7名の部下を統括することになったのですが、部下のなかに、何となく元気がなく、ふさぎ込んでいるような者がおり、同僚ともあまり会話がないような状態なので心配です。
管理職の立場としては、たしかに元気がない部下がいるというのは気になるところですね。その部下がふさぎ込んでいるという状態の背景に明確な理由があるのか、そうでないのか確認が必要だと思います。その理由が仕事上のものなのか、私生活のなかのものなのか、によっても対応は異なってくるからです。
たとえば家族を失ったショックに起因する状態なら、その心の傷がいえるまでに少なくとも半年から1年はかかるでしょう。家族同然に暮らしていたペットの死でも同じような気持ちになるかもしれません。
ふさぎ込むような明確な理由の有無についてどのように確認するかについてはケースバイケースになります。本人とある程度良好な人間関係が構築できているのであれば、特別な理由があるのかについて、本人に直接確認することも可能でしょう。
その際には、ほかの人には聞こえないような落ち着いた場所で、相手のトーンに合わせたゆっくりとしたペースで聴くとよいでしょう。心が疲れている人はエネルギッシュな人と会話しただけで疲れてしまい、本音を話せなくなったり、症状が悪化する可能性もあるからです。
「何か困っていることがあれば支援する」というスタンスで状況を聞いてみましょう。そこではっきりした理由がわかれば、解決の手段がみえてくるかもしれません。
「大丈夫です」という答えが返ってきたら、しばらく様子をみてもよいかもしれません。ただし2、3週間たっても状況が変わっていないようであれば、専門家のサポートも視野に入れた対応策を検討する必要があるでしょう。
また、明確な理由がみあたらないような場合は、「きちんと食事がとれているか」「毎晩しっかりと眠れているか」について確認するのがポイントです。こころの不調は、食欲不振や不眠といったかたちで表に出ること が少なくありません。そうした症状がみられるのであれば、産業医などの専門家に相談することも勧めてみましょう。
直接本人に話を聴くことが難しい場合は、職場の兄貴分、姉貴分といったメンターにあたるような先輩を通じて聞いてみるのもひとつの方法です(企業実務 16年11月号より転載)。
合同会社オフィスプリズム代表。産業カウンセラー。企業のメンタルヘルスやハラスメント対策等についてのカウンセリングやコンサルティングに従事し、2000社以上の対応実績をもつ。メンタルヘルス等に関する著書多数。