人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

●サイト(オフィス・モリオカ)
  → https://office-morioka.com/
●ツイッター
  → http://twitter.com/h_morioka
●facebookページ
  → https://www.facebook.com/officemorioka/
●Instagram
 → https://www.instagram.com/office_morioka/

 

阿蘇神社

このエントリーをはてなブックマークに追加

2017/08/28 11:03

さて、阿蘇に豊穣をもたらした健磐龍命を祀っているのが、阿蘇市一の宮町の阿蘇神社である。第七代孝霊天皇の時代に、健磐龍命の子で初代阿蘇国造に任じられた速瓶玉命が両親を祀ったのに始まると伝えられる。

健磐龍命の父神八井耳命(かむやいみみのみこと)は初代神武天皇の子で、第二代綏靖(すいぜい)天皇の兄にあたる。本来ならば神八井耳命が天皇家を継ぐことになるのだが、神八井耳命は天皇位を勇猛な弟に譲り、自らは神祇を祭る仕事についたという。

そして、以後代々阿蘇神社の大宮司をつとめた阿蘇家は健磐龍命の子孫である。つまり、阿蘇家とは天皇家から最も初期に分家した氏族で、しかも系図上では直系にあたることになる。

阿蘇神社と、天皇家発祥の地である高千穂地方は県が違うため遠く感じるが、実は地図で見ると一山超えた場所にあり距離的にはそれほど遠くない。

おそらく、高千穂時代の大王家(天皇家)と阿蘇神社の阿蘇家の間には、古くから交流があったのだろう。天皇家の兄の子孫であるという伝承も、古代社会における阿蘇神社の格の高さを象徴するものと考えられる。阿蘇神社は、当時各地にある神社の中でも別格の存在だったのではないだうろか。

なお、阿蘇神社は熊本地震で楼門と拝殿が全壊する大きな被害があり、再建中だった。

このエントリーをはてなブックマークに追加

ページのトップへ