人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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佐野のわたしと「鉢木」

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2017/07/10 13:42

9日、群馬県館林市で早くも37℃を記録。毎年猛暑となる群馬県に、暑くなる前に訪れてきた。今回訪ねたのは、館林のある東毛でなく県西部の西毛地区。JR高崎駅からローカル私鉄に乗り換え、上信電鉄沿線を歩いてきた。

最初に降りたのは平成26年12月に開業という新しい「佐野のわたし」駅。烏川のたもとにあり、かつては佐野の渡しという渡し船のあった場所だ。

ところで、謡曲「鉢木(はちのき)」をご存じだろうか。謡曲そのものを聞いたことのある人は少ないと思うが、年配の方だと歴史の教科書の片隅に乗っていた話を記憶しているかもしれない。

鎌倉時代のこと、大雪の中一人の旅の僧が佐野荘を訪れ、佐野常世という武士の家に宿を求めた。常世は一族に所領を奪われて貧乏しているが、いざというときのために馬だけは残しているといい、丹精込めた盆栽の鉢の木を僧のために薪として囲炉裏にくべた。

鉢木の
鉢木の逸話を伝える絵

その後、鎌倉から呼び出しがかかって馬で馳せ参じると、その僧は実は執権北条時頼で、失った領地を返してもらった上に恩賞ももらった、という筋立てである。

この佐野荘というのが、佐野の渡しのある高崎市の佐野だという。そして常世の屋敷跡という常世神社には「鉢木」の物語が紹介されていた。なお、墓は佐野一族の本拠地である栃木県佐野市にあるが、そもそも常世は架空の人物ともされている。

常世神社
常世神社
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