人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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安倍総裁のルーツ

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2006/09/25 10:50

 20日の自民党総裁選で、予想どおり安倍晋三官房長官が総裁に当選した。現在の国会の勢力分野を考えれば、このまま総理大臣となるのは確実。
 安倍氏の父親は、総理一歩手前で亡くなった安倍晋太郎元外相。父方の祖父・安倍寛も代議士経験がある他、安倍晋太郎の岳父は岸信介元首相。その弟は佐藤栄作元首相で、女系つながりとはいえ、一族から3人の総理を出すのは史上初ではないだろうか。さらに実弟は岸家を継いだ岸信夫参院議員という政治家一族だ。

 さて、「あべ」と読む名字にはいくつかの種類がある。一番多いのが「阿部」で、全国順位は20位あたり、という大姓。東日本に多く、特に東北ではベストテンに入っているところも多い。
 続いて多いのが「安部」で、こちらは大分県にたいへん多い他、島根県や福岡県、さらに東北に分布している。全国順位は250位くらいだから、メジャーな名字の部類だ。
 「安倍」姓は3番目で、全国順位は1300位あたり。東北や九州北部では普通だが、それ以外の地方では、珍しいと感じるかもしれない。
 これ以外にも、宮城県に多い「阿辺」や、福岡県甘木市に集中している「安陪」、古代以来続く「阿倍」などがあるが、どちらかというと珍しい名字という範疇に入る。「安辺」と書く稀少な名字もある。

 これらの「あべ」姓のルーツは、古代豪族の「阿倍」氏であるといわれている。阿倍氏は孝元天皇の皇子・大彦命の末裔で、大和朝廷では北陸・東国経営に大きく関ったため、「あべ」一族は現在でも東日本に多い。孝元天皇は第8代天皇で、所謂“欠史8代”(実在しないとみられている天皇)の一人だが、大彦命については、埼玉県の稲荷山古墳から出土した鉄剣にその名が刻まれたことから、実在するとの説もある。

 天皇家とのつながりはともかく、安倍総裁の出自は古代豪族阿倍氏にある。奈良県桜井市には阿倍氏の本拠とした場所が「安倍」や「阿部」という地名となって残っている。ここがルーツであることは間違いない。
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