「ITエンジニア本大賞」って?

デブサミ」ってご存知でしょうか。デブのサミット、つまり太っている人の頂上決戦? というのはもちろん違います。正しくは「Developers Summit」を略したもの。出版社の翔泳社の主催により開催されている、内外のITエンジニアが集う国内有数のビッグイベントの通称です。

2015年2月に開催されたそのデブサミで、著者、訳者、編集者による書籍の内容をアピールするプレゼン大会が行われました。

人呼んで「ITエンジニア本大賞」(正式名称は「ITエンジニアに読んでほしい! 技術書・ビジネス書大賞」と、とても長いものなので、ふつう略してこう呼ばれています)。まだ第2回目と歴史こそ浅いものの、ITエンジニアの間では徐々に浸透して認知されている賞です。

読者から選ばれた『「納品」をなくせばうまくいく』

これは、一般のITエンジニアの人たちから、読んで仕事の役に立った本、初学者にお勧めしたい本、ずっと手元に置いておきたい本、つまりは「オススメ本」を推薦、投票してもらって選ばれるもので、あくまでも「読者が選んだ」というところがミソ。出版社がカネと政治力でロビー活動をした結果……、なんてことはけっしてありません。

ちなみに、ITエンジニア本大賞は、IT系の技術的な専門書が対象の「技術書」部門と、それ以外の「ビジネス書」部門に分かれていますが、2015年2月、このビジネス書部門の栄えある大賞を受けたのが、『「納品」をなくせばうまくいく』(倉貫義人著)です。

そんな賞を受賞するぐらいだから、さぞ役に立ってためになる本なんだろう、ってふつうは思いますよね。そうなんです、とても役に立ってためになる本なんです。って、自画自賛してどうする? ということで、この本の魅力について、以下にポイントをご紹介しようというのが本稿の目的です。 

「納品」って何を納品するの?

それにしても、一見なんだか地味な感じの書名ですよね。そもそも「納品」って何? 何を「納品」するの? 「納品」をなくすってどういうこと? 物流関係の本なの? そんな疑問をもつ方もいるかもしれません。

本書でいうところの「納品」する物とは何かといえば、それはずばりソフトウェアです。つまり、コンピューターを動かすためのプログラムです。

ソフトウェア業界には、顧客企業から開発を受託され、ソフトウェアをつくる専門の企業があります。こういう会社を、システムインテグレーターとか、略してSI(エスアイ)またはSIer(エスアイアー)と呼び、そのビジネスを「受託開発」といいます。

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