仕事は「現場」で起こっています。会議室ではありません。
(プロローグより)

自らの著書『みんなが自分で考えはじめる「15分ミーティング」のすごい効果』の中でこう述べているのは、「ミーティングのやり方次第で社員のやる気と実行力、そして売上を上げられる」という考えのもと、日本初の「ミーティングコンサルタント」として活躍している、矢本治氏です。

矢本氏は「7割が前年実績を下回る」といわれるブライダル業界において、人員の入れ替えや安売りをすることなく、ミーティングのやり方を工夫することだけで売上を3年間で3倍にした実績があります。

そのとき考案したのが「短い時間」に「少ない人数」で、「(お客様情報を持つ)現場のスタッフ」が集まり話し合う「15分ミーティング」です。この短時間のミーティングの繰り返しが、組織の風土にいい影響を与え、業績向上につながったのだそうです。

会議とミーティングの違い

「そもそも会議とミーティングの違いは?」と、疑問をもつ人がいるかもしれません。

著者によると、会議は経営メンバーや役職者が時間をかけて会社の重要な方向性を共有し、決めていく場。ミーティングは現場のメンバーが短時間で会社の方向性を理解し、具体的に実現する方法を“考動”する場なのだそうです。

どちらが良い悪いというものではなく、そもそも役割が違います。ただし、会議ばかり多い会社はそれが形骸化し、会議の準備に追われるばかりで、結局何も決まらなかったりということになりがちです。

会議と違って、ミーティングは気軽にサッと集まり、意見を出し合う場です。もちろんそこには上司も部下もいますが、ミーティングを「仕切る」のは必ずしも上司である必要はありません。ときには、ミーティングのテーマに最も近い「部下」がまとめていくことも必要です。そうすることで「自主性」が身につきますし、なにより変に形式張らないことでチームのコミュニケーションもスムーズになります。

仕事で最も大切なのは、関わっている人が円滑にコミュニケーションをとることです。皆が意見を出し合い、仕事や企画やアイデアを前に進めていくには、スピーディーで前向きなコミュニケーションが不可欠です。

そのために、現場で課題や問題が起こっているときにサッと集合できる仕組みがあること、あるいは、関係者全員でなくても現場で動く人たちが臨機応変に打ち合わせができる場をもつことがとても重要なのです。

15分ミーティングとは?

今の時代、長い時間をかけて会議したのに実行されないようでは、周りの環境の変化に対応できません。大きな変化が連続して起きていく今、状況に合わせて方向性や進め方を小まめに修正していく現場の対応力が必要になります。

そこで有効なのが冒頭でも紹介した、何度も短い時間で行なえる15分ミーティングです。大まかなステップは以下の通り。

ステップ1(5分):質問、アイデア(提案)出し
「今後は?」という、未来視点の質問から、それぞれが提案・アイデア出しを行なう。

ステップ2(5分):提案・アイデアを整理して決定する
出てきた質問、提案を効率よく整理し、チームとして「何をするか」を決める。全員の「合意」が大事。

ステップ3(5分):決まったことを実行する計画を作成する
できる限りこの段階で実行計画を作成する。「空いている時間に」「詳細は後日」ではダメ。

この短時間のミーティングを何度も繰り返すことで、成果の出るパターンを導き出すことができます。大切なのは、サッと集まってサッと解決する「スピード感」です。

15分ミーティングの一番の狙いは、現場スタッフたちが主体的に前向きに参加することで、個人も組織も成長することです。

お客様に毎日接している現場のスタッフが、「今まで決まっていたことを作業的にこなす集団」から、「自分たちで考え、実行する集団」に変われば、必ず売上に直結するはずです。

 「なぜ?」「どうして?」と質問するから失敗する

この15分ミーティング、具体的にはどのように取り組めばいいのでしょうか。著者が提案するのが、会話のパターンを「過去視点」から「未来視点」に変えることです。

「過去視点」の質問とは、「何でこんなミスをしたんだ?」「どうしてこんなに売上が悪いんだ?」などとすでに起こったことに対して原因をさぐるような質問のことです。こうした質問から入ると詰問の場となるので、せっかく集まったにも関わらず後ろ向きで不毛な会に終わってしまいます。

わざわざ時間を割く以上、より良い未来(成果)を得るほうが重要なはず。そのためには「同じミスを繰り返さないために、するべきことは?」「予算達成のために、何をしたらいいかな?」など、「これから行うべきこと」を探る「未来視点」の質問から入るべきなのです。

「過去にとらわれたり周りのせい(他責)にしたりせず、自分たちの力でより良い未来を創造する」ことが、実りのあるミーティングにするために忘れてはいけないことです。

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『みんなが自分で考えはじめる「15分ミーティング」のすごい効果』には、ダラダラと長いだけの会議や話し合いを変えるための、具体的なヒントが満載。15分ミーティングの基本的な進め方から、対策の実行、その後の軌道修正の方法などについて解説されています。最終章には組織のタイプ別ミーティング事例も書かれているので、参考になるでしょう。

「今いる仲間で、会社を変える方法が知りたい」と思っているビジネスパーソンが読んでおくべき1冊だといえます。