モモ「おー、たしかに、会場と時間が一緒になっているこの書き方のほうが読みやすい。何とかしてケチをつけようと思っていたのに!」
モジャ「おいおい『ケチありき』はやめろ。でもどうして同じグループの情報がバラバラになるのかわかる?」
モモ「それは……」
モジャ「頭に浮かんだことをポンポン書くからさ。何の考えもなしに。だから、本来同じグループに入るはずの情報が離れてしまうんだ」
モモ「ああー、それ、私のことだ~。頭に浮かんだことをとりとめもなく話すから、昔の彼にあきれられたことがある。『ちゃんと整理してから話せ』って」
モジャ「その彼氏、モモと別れて正解だな」
モモ「こらモジャ! 少しくらい言葉をオブラートに包め!〈佐々木の肩をボンッと叩く〉」

モジャ「わっ、わかったから、暴力はやめろ。気持ちはわかるぞ。いまさら擁護するわけじゃないけど、モモだけじゃなく、人間はもともと情報や考えを整理しながら生きているわけじゃない。誰もが気分で生きている」
モモ「激しく同意! もとい、ハゲドウ!」
モジャ「『もとい』の前より悪くなっちゃったよ!」
モモ「細かいこと言わないの!」
モジャ「気分で生きているからこそ、人に伝えるときには情報や考えの整理が必要なの。同じグループの情報をまとめて書くことは『論理的な伝え方』の第一歩なんだ」

同じグループの情報が散らばっていると、それだけで読む人の理解度が下がります。例文6

上記のダメ文では、この街の「長所→短所→長所」という具合に、同じグループの情報が分散しています。一方の修正文では、この街の「長所→短所」という具合に、同じグループの情報がまとめられています。この書き方であれば、読む人が混乱することはありません。

情報がバラバラになるのを防ぐには?

モモ「ところで……同じグループの仲間の『生き別れ』を防ぐには、いったいどうすればいいの?」
モジャ「生き別れって、おどろおどろしい表現だな。その語彙のセンスは嫌いじゃないけど」
モモ「でしょー。ちょっぴり昭和風情を出してみた」
モジャ「さすが昭和生まれだな」
モモ「違うわ!」

モモにギロっとにらまれて、佐々木は一瞬怖気づきました。

モジャ「わかった、わかった。生き別れを防ぐ対処法な。ポイントは2つある。ひとつ目は、あらかじめ流れを整理してから書きはじめること。2つ目が、書き終えてから見直すこと。とくに大事なのは後者だ。文章の場合は、生き別れに気づくことさえできれば、それを直すことはできるから」
モモ「なんだモジャ先輩、生き別れフレーズ、気に入ってるじゃないの?」
モジャ「合わせたんだよ!」
モモ「いいって、いいって。使用料なしで使わせてあげるから」
モジャ「おまえなあ!」

多くの人が文章を読み返す作業を疎かにしています。本来、文章作成というのは、書くだけでなく、読み返して修正するところまでを含みます。

プロの書き手でも、一発でいいものが書ける人はほとんどいません。何度も読み返しながら、少しずつ文章の質を高めているのです。

モモ「えっと、あとは……あっ、たくさん改行してある」
モジャ「グループごとに空白の行を入れてみた。読みやすくなっただろ?」
モモ「ホントだあ。私、空白の行って、これまであまり使ってこなかったかも」
モジャ「仕方ないさ。学校の先生に『作文の原稿用紙に空白の行を入れなさい』なんて言われてこなかったからな。でも、ことビジネス文章の場合、原稿用紙のルールは無視してOKだ。それよりも、ストレスのない見た目にしてあげることのほうが何倍も大事なことだから」
モモ「一行を短くしたのも意図的ってこと?」
モジャ「そう。横に長すぎる文章は読みにくいから。メールの場合、一行が30文字を超えたら『そろそろ改行かな?』って意識しないと」

佐々木は、多くの人がわかっていそうでわかっていないことを、次々と言語化していきます。そんな佐々木に、モモはちょっぴり嫉妬していました。モモ自身が言語化を苦手にしているからです。

少し暑くなってきたのか、佐々木はジャケットを脱いで、シャツの袖をまくり上げました。その瞬間、モモが生理的な拒否反応を示しました。

〈その腕のモジャ毛は見せんでええって!〉

モモ「ところで、どうしてそんなに文章の書き方に詳しいの? そういえば、モジャ先輩の書く文章って、いつもわかりやすいよね」
モジャ「あれ、知らなかったっけ? カキネットに来る前に、出版社で雑誌の編集者をしてたんだ」
モモ「へえー、はじめて知った。だから文章を書くのが得意なんだ」
モジャ「それが、そうでもなくて。入社した当初は、自分の才能のなさに落ち込んだもんだよ。編集長やデスクにさんざん叱られてきたから。何度書き直してもOKをもらえなくて、涙を流しながら書いていたこともあったよ」

モモ「へえー、モジャ先輩にも、そんな過去があったんだあ」
モジャ「まあな。昔のオレは、いまのモモと『どんぐりの背比べ』さ」
モモ「えへへ。ほめられるとうれしいかも」
モジャ「ほめてねーから。ったく、おまえはどこまで単細胞な思考回路をしてんだ」
モモ「コラコラ、それ言いすぎ。細胞に失礼ですから!」
モジャ「そっちかよ!」

〈出張帰りにちょっと会社に立ち寄っただけなのに、いったいオレは何をしているんだ?〉

佐々木は一瞬よぎった素朴な疑問を、今宵10度目くらいの苦笑で打ち消しました。

☆☆☆

CHAPTER01のポイント解説

1.ひとつの文にはひとつの意味を(一文一義)。
2.主語と述語を正しく対応させる(主語と述語をねじらない)。
3.主語と述語を近づける。
4.同じグループの情報をそろえる。
 ※「論理的な伝え方」の第一歩。
5.文章作成とは「書く」だけでなく、「読み返して直す」ところまでを含む。
6.見た目を読みやすくする。
 ※空白の行を使う/1行を短めにする。


モモの「懇親会案内文」はまだまだ修正の途中ですが、本書のCHPTER01はここまで。気になる方は本書をお読みください!

『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(山口拓朗著)

【本書の章立て】

01 ひとつの文章にはひとつの意味を
02 仕事で使う文章には必ずといっていいほど目的がある
03 具体的に書くとダンゼン伝わりやすくなる
04 状況に応じてテンプレートを活用する
05 読者ターゲットの設定とニーズの把握がすべて
06 400文字の文章はワンメッセージに絞る
07 ネット上の文章で重要なSEO
08 読者が知りたいことを過不足なく書く技術

章ごとに織り交ぜられた漫画にモモとモジャ先輩のユーモラスなやり取り、わかりやすい解説で、文章を書くことが好きになる! 『そもそも文章ってどう書くんですか?』は全国の書店で発売中です。