『楽天で学んだ「絶対目標達成」7つの鉄則』の著者で、コンサルタントや出資者として複数のベンチャー企業の経営に関わる小林史生さんは、草創期の楽天でキャリアを磨いた経験を持ちます。入社は2000年。「楽天市場」の初期の主要メンバーとして活躍し複数の事業部長を歴任したのち、買収先のアメリカ企業の社長に抜擢され低迷していた会社の再建に成功するなど、成果を上げ続けました。

そして、楽天を卒業後、自分のコンサルティング会社を興し様々な会社の支援をしていたとき、次のことに気がついたそうです。

「楽天で当然と思って実行していた経営手法や営業メソッドは、業界や企業規模にかかわらず非常に有効で、すぐに結果を出すことができる方法である」

それは、数多くの楽天出身者がグローバルなビジネスシーンで大活躍していることからもわかります。

前掲の小林さんの著書には、事業を拡大し続ける楽天で毎日実践されている目標達成のための手法や仕組みが、惜しげもなく公開されています。ほんの一部ですが紹介しましょう。

「因数分解を徹底して打ち手を繰り出す」

楽天の社内では、よく「因数分解」と言う言葉が聞こえるそうです。簡単に言うとビジネスの構成要素をバラバラに分解することで、一般的に言われるKPIの設定と同義です。

楽天のすごいところは、とにかくこれを、結果につながるまで徹底的にやること。大抵の企業はやり方は知っていても、なかなかやりきれない場合が多いのです。

因数分解の具体例をあげてみます。月商1000万円のインターネットショップの売上を1年後に2000万円にするという目標を考えてみましょう。

まず、1000万円の売上の構成要素を考えます。要素は次のように分解できます。

例1)売上1000万円=アクセス人数(サイトに来た人の数)×転換率(来た人が購入する確率)×客単価

違う視点でみると、次のようにも分解できるでしょう。

例2)売上1000万円=客数(購入したお客様の数)×購入頻度×客単価

さらには、新規顧客と既存顧客の売上に分解したり、商品別の売上に分解することもできます。

さて、売上を1000万円から2000万円に上げる目標を達成するために、例1)で考えてみます。この場合、分解した3つの要素のうちどれかひとつを、何らかのアクションによって2倍にできれば売上2倍を達成できます。また、それぞれの要素を1.3倍にすれば、売上は2.2倍になります。そのためには、また別のアクションが必要になるでしょう。

つまり、因数分解は目標達成のためのアクションを洗い出すために必要なステップなのです。楽天では、それぞれの要素を上げるためのアクションを複数、多いときは10ほども洗い出し、PDCAを高速で回して、結果が出るまでやりきるのだそうです。

因数分解してアクションを決めて、結果が出るまで徹底してやりきる。楽天の代表的な行動習慣です。

「面白いアイデアはすぐに、小さく試す」

楽天には、面白いアイデアがあれば、まず「小さく試す」文化があります。かつてCUSOと呼ばれていたそうです。その意味は「小さく(C)生んで(U)、大きく(O)育てる(S)」

現実には、ビジネスは思った通りにいくことは稀です。施策を練りに練って打ったとしても、すぐに結果が出るほど甘くないのです。

だから、本格的に行動に移す前にまず「小さく試す」。このとき、成功か失敗かはさほど重要ではありません。それよりも試したことに対する反応、リアクションを検証し、次に精度の高いアクションにつなげることが重要視されます。

「考える前にまず行動しろ」とはよく言われることですが、楽天の三木谷社長の言葉は少し違いました。彼は「考えるために行動しろ」と言っていたそうです。試したあとに徹底的に考えることで、リスクを最小限に抑えて最大の効果を出す。楽天には、20年も前からこうした考えが根付いているそうです。