顧客ターゲット層を設定しても、それが社内外の関係者に共有されていなければ有効な施策が打てません。ターゲット層に対する関係者の認識を共通化するにはどうしたらいいのでしょうか。
新刊『課題解決につながる「実践マーケティング入門」』(理央周 著)から、「ターゲティング」をテーマに全3回の連載をお届けします。最終回は「ペルソナ・マーケティング」について。
第1回第2回はこちら)

【今回のPoint】ペルソナ・マーケティングでターゲットを具体化する

□STPで絞ったターゲット像は抽象的で解釈が異なることもあるため、具体的なペルソナをつくって共通認識を持つ
□ターゲット像に名前、年齢、住所、家族構成、1週間の過ごし方などの情報を加えてペルソナをつくる
□ペルソナをつくる目的は、ターゲット像の社内外共有
□共通認識があれば、顧客を起点にした議論ができる

※著者講演会を2017年11月8日(水)に開催します。詳細は2ページ目末尾をご参照ください。


ターゲットを設定して、消費者インサイトまで絞り込んだら、それを社内外の関係者の間に浸透させていきます。社内外の関係者とターゲット像についての共通認識を持って一丸となって行動するためです。その際、典型的なターゲット像を決め、社内での共通理解を促す手法に「ペルソナ・マーケティング」があります。

たった1人に絞り込む「ペルソナ・マーケティング」

チェーン展開するあるエステサロンで、「25歳から45歳の会社勤めの女性または兼業主婦で、都心在住。普段から美容と健康に気をつかう女性。可処分所得の15%以上を自分の趣味にかけることができる人」というターゲット像を設定したとします。

たしかにこのターゲット像には、デモ・ジオ・サイコ・ライフが4つともしっかりと入っています。しかし、これでは解釈が人によって異なり、像そのものがぼやけてしまうでしょう。年齢ひとつとっても、25歳と45歳ではイメージがまったく違います。これでは、共通認識を持てないまま、行動することになります。

この課題を解決するために、抽象的なターゲット像に、名前、年齢、住所などの具体的な情報を追加して、1人の架空の人物を想定し全組織で共有します。この手法を「ペルソナ・マーケティング」といいます。

ペルソナとはもともと「仮面」という意味です。心理学者のユングが「人間の外的側面」の概念をペルソナと呼んだことから、マーケティングでは「自社プロダクトを使ってくれる、最も典型的で象徴的なモデル・ユーザー像」の意味で使われます。

たとえば、エステサロンの事例でペルソナを設定するとすれば、

「山本優子、38歳。東京都世田谷区玉川3丁目在住、最寄り駅は東急田園都市線二子玉川駅。家族構成は40歳の夫と12歳と9歳の男女の子ども。子どもの手がかからなくなったのを機に、週4日事務のパートに出る。週2回、ヨガ教室に通い、週末は息子の野球の試合を家族で応援する」

といった具合に細かく設定します(あくまで架空の設定です)。

このように、名前、年齢、住所、家族構成、1週間の過ごし方などの情報を加えて具体化していくのです。さらに、人物のイメージに近い写真を貼ったり、イラスト(アバター)を作成したりすることもあります。ビジュアルが大事な場合には、有名人にたとえる方法もあります。

こうして設定したペルソナを使って、ターゲット像を会議で営業部員に共有したり、広告代理店にキャンペーンなどのオリエンテーションをする際に提示したりすれば、「うちの会社は一丸となって山本優子さんのような顧客を獲得する」という共通認識を持ちやすくなります。