加えて、牛久保氏は「『過去の実績がすごい=優秀』と短絡的に判断するのも避けるべき」としている。

どう実績を上げたかと、目標未達をどう防ごうとしたかは同じことのように感じるかもしれませんが別物です。

前者は、結果につながった工夫や努力は聞けても、結果につながらなかったものは話に出てきません。チームの実績と自分自身の実績を混同して答える応募者が多いというマイナスもあります。

それに対し後者は、その人材が業務目標の未達をどの程度嫌がり、自分のプライドと全能力をかけ、どのような試行錯誤をしながら、あきらめずに目標を達成してきたかをつかみやすくなります。

単に高い実績を上げたことよりも、どういう論理的な行動や工夫によってそれを成し遂げたかが重要であり、さらにもっと重要なのは、徹底して負けを嫌い、目標未達を防いできたかどうかなのです

zisseki

(同P.131-132より、強調原文まま)

面接担当者にさせるべきではない質問

ある程度場数を踏んできたベテラン担当者ならご承知だろうが、面接では「聞くべきではない項目」が存在する。厚生労働省が「公正な採用選考のガイドライン」としてまとめているので、面接担当者に確認させておくといいだろう。

これはあくまでガイドラインであり、質問することに対して罰則があるわけではない。たとえば、マスコミや出版業界などは業種柄「新聞・雑誌・愛読書」に関して質問せざるを得ないこともあるだろうが、一般的には質問しないことが望ましいとされている。

採用の質を一番左右するのは「企業の事前準備の質」

就職や転職をする際、応募者は「自分のキャリア・スキルの棚卸」や「応募する企業・業界の研究」など、相応の準備をしたうえで面接に臨んでいる。一方、企業側は求人広告や転職エージェントを使い、相応のコストをかけているにもかかわらず、社内の事前準備をさほど進めないまま面接に臨むケースが少なくない。

しかし、採用活動を成功に導くためには「企業としての事前準備」が不可欠だ。それは「面接担当者にトレーニングを施す」といったことだけではなく「求める人材の軸をすり合わせておく」ことも含まれる。

多くの企業にとって一番基本にあるのは、「どういう人材を採りたいか」ということです。ここを具体的に共有できていなければ、必然的に面接の評価も曖昧になり、判断がぶれる原因になってしまいます

採りたい人材像について聞くと、経営者が長期的な視点に立って考えたり、応募者の将来性を信じて判断することが多いのに対し、現場は目の前の業務をこなすことを優先し、短期的に考える傾向があるようです。

最も残念に感じるのは、どのようなスキル・能力を求めるかについては社内でおおよその意見は合っているものの、価値観や志向性といった考え方の部分でコンセンサスが取れていないことです。

スキル・能力だけでなく、価値観・志向性の面からも、何を求め何を譲れるのか、あるいは入社後の教育や組織で何をカバーできるのかについて、あらかじめコンセンサスを取っておくことが重要です。

(同P.25-26より。強調原文まま)


ここまで「企業が面接の場で確認すべきこと」を見てきたが、優秀な人物を採用するには「企業側から誘う」といったアプローチも不可欠だ。本記事ではあまり触れていないが、応募者を見抜き「これは」と思った人物に自社の魅力を伝え、誠意をもって誘う――面接担当者にはそうした技量も身につけさせる必要があるだろう。