要素を整理してわかりやすくする方法

次の資料は、ある団体が取引業者を選ぶ際に重視した点についてまとめたものです。この資料を見てどう感じますか?

サプライヤー1
同書 80ページより

棒グラフであらわされたデータやコメントもわかりやすいので、「よくできている」と思う人も多いかもしれません。しかしこの資料にも、多くの改善すべき点があります。改良版を下に示します。

サプライヤー2
同書 81ページより

明らかにこちらのほうが、データが示すメッセージが伝わりやすくなっています。どのような修正を加えたのでしょうか。

「中央揃え」は揃わない?

もっとも効果的な変更点は、中央揃えの文章(タイトル、サブタイトル、出所)を左揃えにしたことです。オリジナルは左端と右端がガタガタになっていて、無秩序な印象を与えます。中央揃えのテキストは、私たちが考えるよりも雑に見えることが多いので、できるだけ避けたほうがいいでしょう。

また、一般的に人は、ページの左上から「Z」の形で視線を移動して情報を読みとります。そのため、タイトルなどの文章は左のいちばん上に置きます。読み手は視線の動きとリンクして内容を理解できるので、ストレスを軽減できます。

斜めの要素は乱雑に見える

オリジナル版のページ上の斜めの要素(横軸のラベル、データと説明文をつなぐ線)を水平にしたり、なくしたりしています。斜めに配置された要素は乱雑に見えると同時に、読みにくくなるからです。「45度の方向に回転された文章は、傾きのない一般的な文章に比べて読む速度が平均で52%遅くなる」という研究もあるそうです。ナフリック氏も、斜めに書かれた文章や線はすすめていません。

間(ま)をつくってメリハリをつける

また、斜めの線をなくしたことで、ページ上にホワイトスペース(空白)が生まれました。著者はこのホワイトスペースの重要性について次のように言っています。

このホワイトスペースを使いこなしましょう。ビジュアルコミュニケーションにおけるホワイトスペースは、人前でのスピーチにおける「間(ま)」と同じくらい重要なものだからです。
(83ページ)

たしかに、話の中に「間」のないスピーチは聴衆の注意を引きつけられません。上手なスピーカーは、強調したい言葉の前後に一瞬の「間」をつくってその言葉を際立たせます。よくできた資料にも同じことが言えるのです。

また、データとコメントを結び付けていた斜めの線の代わりに、色の濃淡で関係性を示しています。その他にも、全体を薄いグレーにして、強調したい語句を黒く色づけすることでコントラストがうまれ、読み手に伝わりやすいものに変化しました。


以上、『Google流 資料作成術』から、伝わりやすいデータ表現のヒントをお届けしました。もちろんこれは、同書の内容のほんの一部に過ぎません。同書ではより複雑なデータを、どうやってわかりやすく見せればよいかを、ビフォー・アフター(対比)やケーススタディーを通じてていねいに解説しています。

現在のビジネスシーンでは、ITやツールの進歩によって、扱えるデータの量が格段に多くなっています。したがって、ビジネスパーソンにとっては、データを使って相手に何かを伝えるスキルを持つことが、より重要になっています。

同書はデータを使ってコミュニケーションするビジネスパーソンにとって、格好のテキストとなるでしょう。