人間の無意識を探る「ニューロ・マーケティング」がマーケティングを変える

しかし、市場の動向や人々の消費行動の変化が早いと言われる昨今において、マーケティング・リサーチも進化しており、「より安く、より早く、よりよいリサーチ」ができるようになっています。

それが「ニュー・マーケティング・リサーチ」(NewMR)です。

『マーケティング・リサーチの基本』(岸川茂編著・JMRX著)は、マーケティング・リサーチの教科書とも言える一冊で、定量調査、定性調査、それぞれの分析手法、アイデア開発へのリサーチ活用、そしてNewMRについて網羅しています。

とりわけ、NewMRをまとめた第6章は、リサーチャーやマーケティング担当者にとって大いに助けになる内容になっています。調査手法には選択肢が増えており、何が知りたいのか、どこにアプローチをしたいのかによって、リサーチ方法も変わってくることが分かります。

『マーケティング・リサーチの基本』209ページより
『マーケティング・リサーチの基本』209ページより

この中でも注目すべきは、「無意識/感情」にある「ニューロ・マーケティング」です。認知神経科学という学問の知見や方法論をマーケティング・リサーチに応用したもので、「神経マーケティング」とも呼ばれています。

簡単にいえば、これまで言語化できなかった、人間が買うか買わないかを意思決定をする際のエモーション(情動)を測定します。調査は、脳波計やfMRI(脳内の血液の流れを見る機材)で行います。

テレビなどの「刺激」を与える広告においては特に有用だとされ、どんなときに脳が反応するのかを測定することで、人間の無意識を探ります。

現在はまだニッチな方法ですが、今後、マーケティングへの応用が広がり、これまでのマーケティング活動を大きく変えるのではないかと期待されています。

「マーケティング・リサーチ」を制する者がビジネスを制する

もう一つご紹介しましょう。

「無意識/感情」にある「表情解析」は、無意識に表出される顔の表情から、消費者の感情パターンを判別するリサーチ方法です。

人の顔には30以上の表情筋があるといわれていますが、その表情筋の位置と動きをカメラで撮影してソフトウェアで解析し、6つの基本感情「ハッピー」「驚き」「悲しみ」「怒り」「恐怖」「嫌悪」と、「ニュートラル」の7つの感情の強さを数値化します。

242ページより
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243ページより
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この調査も、主にテレビ広告の評価に活用されています。

「表情解析」は、現実の視聴環境に近い状況でデータを集めるので、実際の評価との誤差が少なくなるという結果が期待できます。

テレビCMは商品のブランドイメージを決定づけ、その売れ行きを大きく左右する広告です。できるかぎり成功に近づけるために、このNewMRが活用されているのです。


統計学に関する書籍がベストセラーになるなど、データ解析や統計の必要性は世間的にも高まっています。それは、マーケティング・リサーチの手法とも密接な関係があります。

マーケティング・リサーチの基本を知り、最新動向をチェックすることは、どんな仕事に携わっていても有用なことでしょう。