連載(全6回予定)「仏の上司・鬼の上司 彼らが教えてくれたこと」では、12年間経営コンサルティングに従事し、8000人以上のビジネスパーソンの生の声を聞いてきた安達裕哉さんからお聞きした、上司から学んだ「働く」ということについてのヒントを紹介します。

第3回は、問題児社員から一転、トップ営業に変わった、ある女性社員のエピソードです。

上司からみて、扱いづらい社員。会社からみて、生産性の低い社員。
彼らは本当に駄目な社員なのでしょうか――。
(文責:日本実業出版社)

 問題児社員が、一転してトップ営業に!

あなたが働いている社内を見回してみてください。上司の下で生き生きと働いている人もいれば、反対に上司から見放され、意欲をなくしている人もいるのではないでしょうか。

上司との相性は、部下の生産性に大きな影響があります。

中にはどんな人とも仕事ができる器用な方もいますが、それにも限界があります。どうしても人間は、日々関わる人によって影響されるものなのです。

たとえば、以前の会社でこんなことがありました。

Hさんは入社1年目、“素直ではない、行動しない、愚痴が多い”の3拍子が揃った方でした。もちろん上司からは問題児扱い。会社のトップからも「あいつは駄目だ」というレッテルを貼られ、まったく期待されていませんでした。

そして、2年目のチーム替えの際です。トップから提案がありました。「東京に置いておいても腐ってしまうから、環境を変えてあげよう」

そして、その方は地方の支社に配属されました。

すると驚くべきことに、翌年、彼女は成績トップの営業パーソンへと大きく成長したのです。

その理由は、とても単純なことで、新しい上司である支社長のことを、その方が上司として尊敬し、大好きになったからです。

その支社長は、嘘をつかない、虚勢をはらない、指示は明確に出す、いいものはいい、悪いものは悪い、という信条を持つ、部下から大変慕われている人物でした。そのため、ひょっとしたら彼ならばHさんを受けいれてくれるのではないか、という会社の期待があったようです。

その効果は、会社の思惑を大きく上回るものでした。支社長の彼は誰からも期待されていなかったHさんに、「お前はできるやつなんだから頑張れよ」と目をかけ、ときには厳しく指導や教育をしました。Hさんもそんな支社長のことを尊敬し、その指導に応えようと人が変わったように仕事に打ち込むようになりました。数ヶ月もすると、誰からも期待されない存在から、一転して会社のホープになったのです。

このことは、彼女の転勤直前まで一緒に働いていた私にとって、とても衝撃的な出来事でした。