「文章がうまく書けない!」「そもそも何を書けばいいかわからない!」……このように文章を書くことに苦手意識を持つ人は多いようです。しかし、たとえ苦手でも、ブログやメールにSNSと、文章を書く機会はいつのまにか格段に増えています。

じつにやっかいな世の中です。

フリーライターとして多数の取材、執筆活動の傍ら、講演や研修を通じて「伝わる文章の書き方」や「ウェブ&ブログの書き方」「売れる文章&コピーの書き方」などのノウハウを提供している山口拓朗さんにも、上の2つの悩みが特に多く寄せられるそうです。

ここでは山口さんの著書『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』から、そんな悩みを解決するポイントを、少しだけ紹介しましょう。

それは「ネタがみるみる吸い寄せられる“アンテナ情報収集法”」「書く前に視覚化する“文章の見取り図”のつくり方」です。



山口さんは、文章で人に何かを伝えるプロセスのうち、「書く」ことが占める割合は20%にすぎない、と言っています。残りの80%は書くための準備で、具体的には情報の収集と整理です。その方法やスキルを知らないままに書き方のテクニックを磨いても、上達には限界がある、ということなのです。

まずは、情報収集のための「アンテナの張り方」について見ていきましょう。

ネタがみるみる吸い寄せられる「アンテナ情報収集法」

たとえば、女性は妊娠すると、急に「世の中にはこんなにたくさんの赤ちゃんがいたのか」と気づくそうです。また、今まで関心を持たなかったベビー用品店や産婦人科などに関する情報もいつのまにか入ってくるようになります。

これはつまり、妊娠したことによって「赤ちゃん情報アンテナ」が彼女の頭の中に自然に張られて、赤ちゃんに関するネタが勝手に引っかかってくる、ということです。

ネタを収集するには、このような状態を意図してつくります。書きたいテーマに関するアンテナを能動的に張るのです。

お笑い芸人たちの爆笑トークをテレビで見ていると、あまりのおもしろさと豊富なネタに感心してしまいますが、彼らは常に、「おもしろいエピソード」に反応するアンテナを張っているから、一般人では気づかない「エピソードのおもしろさ」に気づくことができるのです。

わたしたちだって、たとえば「笑える失敗エピソード(自虐ネタ)」を書きたいときに、「笑える失敗エピソード(自虐ネタ)はないかな?」といつもアンテナを張っていれば、エピソードを取り逃がすことはないはずです。

メガネをかけていることに気づかずに顔を洗ってしまったとき。「自虐ネタアンテナ」がなければ「うぅ、やっちまった…」とひとりごとを言って忘れてしまいますが、アンテナを張っていれば「これはネタになる」とほくそ笑むことになるでしょう。家族に見られてバカにされたりしたらより自虐性が増して、さらに強力なネタになります。

このように、アンテナが張られると必要な情報が見える「目」ができて、慣れてくると、一見無関係な事柄からも情報を拾えるようになってきます。

また、アンテナを張った瞬間に情報収集に対する貪欲さが生まれて、メディアに対する接し方が変化したり、積極的に関連する本や雑誌を探したりするなど、日常的な行動も変わってきます。

視覚化すれば「アンテナ感度」が増す

アンテナを張るときのテーマは、頭で考えているだけでなくノートに書きだして視覚化すると、あいまいな「もや」がはっきりして感度が増します。

本書で例示されている「表参道にある美容室『ZERO』の店長ブログ」を参考に見てみます。店の存在をアピールするために、カリスマ店長はどんなブログを書けばいいのでしょうか。