最近、介護問題が非常に多く取り沙汰されています。その影響もあってか、「最期は介護で手を煩わせたくない」「寝たきりで世話してもらうことのないよう、ポックリと逝きたい」と願う人は年々増加傾向にあると言われています。

そこで、手軽にはじめられる「介護がいらない体づくりの方法」や日々の健康に関する疑問を、アンチエイジングの第一人者であり白澤抗加齢研究所の所長を務める白澤卓二先生に聞いてみました。(文責:日本実業出版社)

 【質問1】「ど忘れ」「物忘れ」がひどいのですが、大丈夫でしょうか? 改善方法はありますか?

 
「ど忘れ」と「物忘れ」は似て非なるもの


まず、皆さんに知っておいていただきたいのは、「ど忘れ」と「物忘れ」は似ているようで、全然違うものだということです。

たとえば、「普段使わない通帳をどこに片づけたかすぐ思い出せない」「部下の名字がとっさに出てこない」というのは「ど忘れ」です。脳は覚えていられる容量を超えそうになると「必要でないと判断したものは一旦しまいこむ」性質があり、それが「ど忘れ」です。部下の名字をど忘れすると、「毎日コミュニケーションをとっている人の名前を忘れるなんて」と自分で自分に驚くかもしれませんが、「いまの状況では部下の名字は別に重要ではない」と脳がそのとき判断しただけのことです。

一方の物忘れは、「通帳を自分が片づけたこと自体忘れる」、「部下が自分の部下であることを忘れる」など、覚えているべき「関係性」や「過去の行動」を忘れてしまうことです。「昨日何を食べたかすぐ思い出せない」は「ど忘れ」で、「昨日、ご飯を食べたことを忘れている」が「物忘れ」というと、よりわかりやすいでしょうか?

こうして自分の「忘れた」が「ど忘れ」か「物忘れ」かを分けていくと、大抵の人は「ど忘れ」だと思います。「ど忘れ」にあたるでしょう。若い頃より「ど忘れ」の頻度は高くなりますが、それは自然な加齢現象です。

「ど忘れ」を減らし「物忘れ」を防止するのも、ココナッツオイル

 
とはいえ、なるべくなら「ど忘れ」の頻度も減らしたいし、将来的にアルツハイマーや認知症を防止したい、というのが人情です。

私としては、そのためにも糖質制限食と、ココナッツオイルの摂取をお勧めします。本でも紹介しましたが、認知症が発症する要因と血糖値は大きく関係しています。脳の糖尿病が認知症なのです。ですから糖質オフの食事と、ココナッツオイルの摂取は欠かせません。

くわしくは本書を参照してほしいのですが、糖質をオフしてココナッツオイルをとると、体内の糖が減ってケトン体が増えます。このケトン体が増えることが認知症改善には重要で、認知症が改善した患者は脳内のケトン体濃度が高いという結果もあります。ですから、結論としては「認知症予防にも糖質オフとココナッツオイル」。これに尽きます。

ココナッツオイルで物忘れを予防する!(photo by すしぱく/PAKUTASO)

 

【質問2】健康のためには脳と体の「糖」コントロールが必要とのことですが、どうしても白米やパスタが好きです。自然と食べたくなくなる食べ合わせはありませんか?


ココナッツの香りは白米には合わない

 
ガマンしなさい! と言いたいところですが、食べたくなる気持ちもわかります(笑)。本に書いたように、「どうしても食べるなら夜」というのは解決策のひとつですが、「食べたくなくなる食べ合わせ」というなら、私は主菜の調理にエキストラヴァージンココナッツオイルを使うことをお勧めします。

というのも、エキストラヴァージンココナッツオイルは、ココナッツの甘い香りがするんですね。エスニック料理にはともかく、洋風のパスタや白米には合いません。自然と主食をとる量が減ります。これ、ピュアオイルではダメですよ。ピュアオイルはココナッツの香りがしませんからね。少々荒療治ですが、効果はあります。

生野菜メインの主菜もお勧め


ほかには「生野菜+酢」の主菜をとることでしょうか? 酢が効いたサラダをおかずに白米をもりもり食べる、という人はあまり見たことがありません。

というふうに、「あんまり合わないなあ」というものをおかずに持ってくるのはお勧めです。白米が好きな人は、それでも食べてしまうかもしれませんが、明太子や焼き肉など「白いごはんに合うおかず」と一緒に食べるよりは、白米の摂取量が減ると思います。

パスタの場合も同様に、きゅうりや人参を細切りした「ベジタブルヌードル」をあわせてサラダスパゲティにしてみましょう。ベジタブルヌードルを作れる専用のピーラーも売っています。麺の量を減らせますし、温かいトマトソースやカルボナーラソースより、サラダ仕立てにしたほうがパスタの摂取量も減るはずです。

野菜中心の食事へ(photo by さわ太郎/PAKUTASO)