「選択」は、やっかいだ

人は朝起きてから眠りにつくまで、ひょっとしたら夢の中までも、毎日さまざまな選択をしています。

朝食はごはんかパンか? コートを着るか着ないか? 企画書に取りかかるのは明日にして飲みに行ってしまおうか? といったささいなことから、どの学校に行くのか? どんな仕事をするのか? 誰と結婚するのか? という人生を左右するものまで。

その積み重ねでいまの私たちがあるわけですが、どんな人にも「あの選択は間違いだった」という後悔の一つや二つはあるでしょう。

後悔できるものならまだいい方です。やっかいなのは「どこでどう間違えたのか」がわからない、という状態。「最近なんとなくパッとしない」「頑張っているのに成果が出ない」というとき、もしかしたら過去に「選択の落とし穴」にはまったのかもしれません。

ブレイクスルー思考ってなんだ?

『飛び抜けたアイデアを出す人がやっている ブレイクスルー思考トレーニング』(ひもとあやか著 日比野省三監修、以下同書)は、私たちが岐路に立った時、賢い選択をするために採るべき「考え方の枠組み」を提供してくれる本。

同書のスタイルは、主人公である「ブタのピギー」をはじめとした登場人物(?)たちの悩みの解決法を、読者が一緒に考えていくもの。読者は自然に、賢く選択する方法を学べます。

その骨格にあるのは「ブレイクスルー思考」です。日米2人の学者によって提唱され注目されたブレイクスルー思考は、前例や成功体験から問題の解決策を導き出すのではなく、解決する事の「真の目的」を徹底的に問い直すことからスタートします

同書は、ブレイクスルー思考の基本的な枠組みを「7つの思考習慣」と表現して、わかりやすく解説する本でもあります。

その第Ⅰ部「すごい結果を生み出すための3つの選択力」から、第1の思考習慣「セルフメイド選択」について概説してみましょう。

成功体験には落とし穴がある

同書に登場する営業マンの「マキタ君」は悩んでいます。

「営業成績がのびず、いつもノルマに追われている僕。トップセールスを誇る先輩のやり方をまねしてみたり、カリスマ営業マンの成功本を読み漁ってみたりもしたけれど、一向に成果が出ない」(同書14ページより)

私たちは何かを選択するとき、つい前例や成功例を重視してしまいます。親や先輩、歴史上の人物、競合他社がうまくいったのなら、安全に違いない、きっと大丈夫、と考えるのです。

ここに「選択の落とし穴」があります。

なぜなら、違いを見落としているからです。営業マンのマキタ君の例で言えば、マキタ君とカリスマ営業マンは年かっこうも個性も違う。その違いを考えずに彼らと同じようなことをしても、営業成績が上がるとは限らないのです。

このような選択は「レディメイド(既製服)選択」といいます。既存の選択肢、前例があることを決め手として選択しているからです。