破滅の理由を書く前に、タワマン購入の節税スキームを見てみましょう。

マンションの土地持分は、高層階であっても低層階であっても一律に評価される。これが、この節税手法のミソになっている。つまり、マンションの広さが同じであれば、割安な低層階と同じ価格で高層階の土地は評価されるのだ。したがって、高層階になればなるほど、その節税効果は高くなる。

たとえば、3億円の高層階のマンションを購入しても相続税の評価額は低層階と同じ5000万円程度になったりするのだ。つまり、タワーマンションを買うだけで2億5000万円も評価を下げることができるので、相続税は一気に節税できることになる。

これが、タワーマンション節税が人気になっている理由だ。

(p.46-47より)

東日本大震災の直後などは「エレベーターが動かないので、高層階は不便」とか、タワマンが林立する東京湾岸部で発生した液状化現象の報道など、タワマンにまつわるネガティブな話もさまざまありましたが、こうした相続対策上のメリットが注目を集め「さながら相続税バブルともいえる建設ラッシュが起こっている」との報道もあります

それを踏まえて、一体何が身の破滅を招くのか。その答えが税務調査です。具体的にはこのようになります。

しかし、相続発生後、このタワーマンションを売却してしまうと相続税を追徴されることがある。たとえば、節税だけのために購入したのが明らかな場合は、通常の路線価基準ではなく市場価額、つまり実際の相場の値段で申告し直さなければならないのである。

(中略)

したがって、税務調査がきたらほぼ間違いなく修正申告を迫られると思ったほうがよい。もし、タワーマンションを相場の3億円として修正申告するなら、約3000万円の相続税が追徴される。

実際にタワーマンション節税で、最高裁まで争ったケースもあるが、結果は相続人の主張は退けられている。裁判所の見解はこうである。

「明らかに節税目的で一時的に所有したタワーマンションは、通常の路線価基準ではなく、市場価額で評価されるべきである」

このケースでは、売るタイミングが相続後すぐであったために、節税を封じ込まれてしまったが、売るタイミングが遅ければ必ず大丈夫なわけではない。税務署が「租税回避行為」と認める具体的な基準はどこにもないからだ。

ではどうすればいいのか? この件については第6章で詳述しよう。

とにかく、なんちゃってコンサルタントの口車に乗せられて、タワーマンションを買えば相続対策になる、などと盲目的に信じてはいけないのである

(p.47-48より、強調原文ママ)

引用中にも「この件については第6章で詳述しよう」とありますが、タワマン購入を租税回避目的とみなされないようにする方法は、まったくないわけではありません。こちらにつきましては、本書でご確認ください。

(後編へ続く)