新事業開発が必要なのは起業家だけではありません。既存企業も、新しい事業をつくり出し続けなければ存続は不可能です。
しかし、見事に成功する事業はわずか。そのウラには数えきれないほどの失敗があります。成否を分けるものはいったいなんなのでしょう?

事業を創造する人材が求められている

企業は新事業をつくり続けなければ存在価値を無くしてしまいます。

なぜなら、事業には例外なく「ライフサイクル」があるからです。企業は、手がける事業をそのライフサイクルに応じて経営戦略のなかに位置づけ、「事業ポートフォリオ」を的確にマネジメントしなければなりません。

永遠に続く事業はそうそう無いため、企業は、つねに新事業の開発に取り組む必要があります。特に近年の、ITを中心とした産業技術の目覚ましい進展により、既存の製品やサービスが陳腐化するスピードはますます速くなっています。「いま」の稼ぎ頭が元気なうちに、新事業の芽を育てておかなければ危機を招いてしまうことは、世界中の大企業の失敗例を見ても明らかでしょう。

「それはそうだとしても、新事業開発など、起業家でもなくベンチャーに参画しているわけでもない自分には縁遠いものだ」と思っている人も多いかもしれません。

その点について、コンサルタントとして企業の新事業創造を支援する河瀬誠氏はこう指摘しています。

20世紀の世界では、決まったことを正確に実行することが、大きな価値を生んだ。品質管理やオペレーション能力を磨き続けた日本企業は、その中で躍進してきた。

しかし、21世紀には、言われたことを正しくきちんとやるだけの仕事は、どんどん価値をなくしていく。そのような仕事はロボットに奪われ、またそうした労働力は世界中から安価に調達できるようになる。

21世紀には、「新しい価値、新しい事業、新しい仕事」をつくり出せる人がより求められるようになるのだ。

(『新事業開発スタートブック』はじめに より)

普通のビジネスパーソンも、今働いている会社の中で新しい事業の創造にチャレンジすることはとても有益です。それを継続していけば、徐々に能力も高まり、“社内起業家”(イントレプレナー)として成功体験も積み重ねられるでしょう。

それでも新事業開発は失敗する

しかし、新事業開発は、既存事業から完全に離れ、むしろそれを否定するほどの発想や行動力が必要ですから、簡単にうまくいくものではありません。成功のウラにはその何十倍もの失敗があるでしょう。

そこでここでは、前述の河瀬氏が著書のなかで挙げている「新事業に失敗する11パターン」を要約して見ていくことにします。それらを学ぶことが、成功への大きなヒントになるはずだからです。